からだの不調や病気に悩まされている人は少なくないでしょうが、できることなら薬や病院に頼りたくないもの。そこで参考にしたいのが、『食べもので「体の不調」を治す本』(山本竜隆、石部晃子著、アスコム)。
医師として多くの人の病気や不調に向き合ってきたという著者は、食事を見なおすことで病気や不調が改善したり、治ったりするケースをもたくさん見てきたのだといいます。つまり本書ではそんな経験に基づいて、「食事でからだの不調を遠ざける方法」を紹介しているわけです。
きょうは基本的な話をまとめた序章「自分の体質を知ることが健康への第一歩!」を見てみたいと思います。
間違ったものを食べると「不調」に
からだの不調は、薬を飲んだり病院に行くだけではなく、食べもので治すことも可能。ただし重要なのは、「なにを食べるか」だといいます。注意したいのは、健康食品と呼ばれるものばかりを選んでしまうこと。たとえば「生姜が健康にいい」からと、朝昼晩毎日食べ続けるのはナンセンス。同じ食材の食べすぎはよくないということです。また、自分の体質に合った食べものを摂ることも大切。
また、自分の体質に合わない食べものを知っておく必要があるとも、著者は主張しています。薬や治療法が体質によって合ったり合わなかったりするのと同じように、食べものも体質によって相性があるということ。「からだによい食べもの」といっても、人によっては逆効果になる場合もあり、それには体質が関係しているのだということです。たとえば、からだを温める効果の高い食べものは、冷え性には向いているものの、ほてりやすい体質には不向き。人によって効果が異なるとは、そういう意味です。(13ページより)
トマトは本当によい食べもの?
「食で健康になる」というテーマは、「からだによい食べものとは?」という話になっていきがち。テレビや雑誌などで「◯◯健康法」などの特集が多いことが、そのいい例です。
たとえばトマトはダイエット効果もあるとされ、女性を中心に人気。美容と健康のために、毎日トマトを食べている人もいるようです。たしかに抗酸化成分のリコピンがたっぷりと含まれたトマトは、アンチエイジング効果が期待できるといわれています。また血液をサラサラにし、ダイエットにも有効だという説もあります。
またトマトはビタミンやミネラルが豊富で、余計な水分を排出してくれるカリウムが含まれているそうです。角度を変えて中医(中国に古くから伝わる医学)の視点で見ても、トマトには「清熱解毒」といって、余分な熱を冷まし、有害物を解毒して血液を浄化する作用があるとされているのだといいます。
ただし重要なのは、そもそも植物学的に見ればトマトは夏野菜だということ。気温が上がってからだが熱くなる季節だからこそ、トマトの「清熱」作用が有効に働くわけです。つまりハウス栽培のおかげで一年中食べられるようになったとはいえ、からだが冷える季節にトマトを食べると、ますます冷えがひどくなってしまうことに。(15ページより)
食事は自然を取り入れる最短ルート
著者が健康になる方法として食事を重要視していることには、自然との触れ合いが関係しているといいます。つまり、からだの不調の多くが、自然から遠ざかっていることに関係しているということ。自然と触れ合うことが大切で、誰にでも手軽にできるその近道が食事だという考え方です。肉や魚、野菜、穀物など、私たちが食べるものはすべて自然から生み出されたもの。私たちのからだは食べものでできているとも言えるわけで、食べることは現代人が自然をからだに取り込む最も効率のよい方法。
逆にいえば、添加物まみれのジャンクフードばかり食べていると、カロリー過多、塩分過多になるだけでなく栄養バランスが崩れ、病気を招いてしまう。人口調味料や合成保存料などの化学薬品を取り込むことにもなります。だからこそ、健康でいたいのなら、できるだけ自然に近い食生活を取り戻すべきだということ。
健康になるには、さまざまなことを考え、実行する必要があるといいます。そのなかで大きな位置を占めるのが自然との触れ合いであり、なかでも特に大切で実行に移しやすいのが、自分に合った食べものを摂ること、つまり「食事」だというわけです。(33ページより)
「自然欠乏」は危険
2006年に『あなたの子どもには自然が足りない』の著者リチャード・ルーブが提唱した「自然欠乏障害(自然欠乏症候群)」とは、読んで字のごとく「自然との触れ合いが不足していること」。しかしこれは、太古の時代から指摘されていたことでもあるといいます。そこで著者は、「自然欠乏症」のチェックリストを紹介しています。「いいえ」が多いほど、自分に自然が足りないということだとか。
1.日の出と日没を意識して生活している(日の出前に起床し、日没から4時間以内に消灯している)
2.木材など自然素材の住宅に住んでいる
3.静寂さや、自然の音などを感じやすい場所で活動している
4.自然の香りを実感しやすい環境で活動している
5.綿や麻、絹など自然素材の衣服を着ていることが多い
6.携帯電話やパソコンに接することは少ない
7.長時間の自動車運転や電車通勤(通学)をしていない
8.主に自然食を摂取し、化学薬品は摂取していない
9.飲料物は、自然水や有機栽培などでつくられたものである
10.電気毛布や電子レンジ、電化製品は用いていない
11.日常的に森林浴、海水浴、日光浴などをしている
12.化学薬品を塗布または吸入していない
(39ページより)
なお自然を取り入れる方法は食事以外にもあり、最も効果があるのは自然のなかに身を置き、数日間を過ごす休暇だそうです。時間がない場合は、公園など少しでも自然のある場所に行って深呼吸をし、ストレッチを行なうだけでも効果的。「都会に住んでいる限り、自然とは縁がないのは当たり前」とあきらめず、できることから始めることが大切だといいます。この考え方は、デジタルデトックスにもつながっていくのではないでしょうか。
ところで本書は、「人間の体質は大きく8つのタイプに分類できる」という考え方を基本としています。自分のタイプを知るための「”体質”自己判断テスト」がついているも、そんな理由があるから。つまり、その結果に従って、自分に最適な食生活を実現できるということです。とても簡単で実用的なので、そちらにもぜひトライしてみてください。
(印南敦史)