人口の減少と高齢化。老朽化が進む住宅と空き家の急増。バス路線の廃止やスーパーの撤退に伴って生じる生活の足の問題や買い物難……。
これらは過疎化が進む地域に限った話ではない。高度成長期に都市近郊で造られた大規模団地、いわゆるニュータウンも同じ問題に直面している。
国土交通省によると、ニュータウン(1955年度以降に事業が始まり、計画人口3千人以上または1千戸以上)は全国で1500を超える。
国交省がこの夏、有識者を集めて始めた検討会では、東京・多摩ニュータウン内のある地区の建て替え例が紹介された。5階建て23棟を11~14階の7棟に 集約。高齢者支援施設や保育所、住民が憩うカフェも整えた。総戸数をもとの2倍近い1200戸余に増やし、増加分の売却収入で住民の負担を抑えつつ、 30~40代の子育て世帯を新たに呼び込んだ。
様々な世代が暮らす街として再出発できた例だが、交通の便など立地条件に恵まれた面は否定できない。同様の改築ができるところは限られるだろう。
それだけに、検討会の議論が建て替えや市街地再開発など国交省の所管分野に限られてはならない。医療・介護や教育施設、店舗の誘致など、役所の縦割りを超えた議論が不可欠だ。
そのためにも出発点として、個々のニュータウンでの取り組みに目を凝らしてはどうか。
多摩、大阪・千里と並ぶ3大ニュータウンの一つ、愛知県の高蔵寺ニュータウンでは、住民が自ら立ち上げたNPOなどと近くの中部大学が連携する。学生が高 齢者宅にホームステイし、空き家で暮らす。大学が住民向けに「シニア大学」を開き、タウン内に大学の施設を設けることも検討していく。
他の地域でも、住民組織と大学、商工会議所、自治体などが協議会を置いた例は多い。住宅の建て替えや再開発の促進より、老壮青のバランスがとれた街づくりに向けて民と学、官が知恵を出しあい、実践していく試みを大切にしたい。
近隣と比べて街としての基盤が整っているニュータウンは少なくない。近隣の活性化とバランスをとることも必要になるだろうし、あるいはニュータウンを一帯の核と位置づけることもできるはずだ。広域的な視点が必要だろう。
正解がすぐには見つからない難題である。しかし、ニュータウン再生を考えることは、少子高齢化時代の街づくりにつながる。
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