公共工事がはかどっていない
国や自治体による公共事業で、建設業界が受注した工事がどれだけ残っているかを示す「未消化工事高」が7月に16兆7333億円になり、過去最高になった。安倍政権は景気対策で多くの工事を発注しているが、人手不足や資材高騰で着工が遅れるなどして積み上がっているという。
国土交通省が17日に発表した7月分の建設総合統計でわかった。未消化工事高は、業者が国や自治体から受注した公共工事額から終わった分の工事額を引いた金額で、国交省が一部の業者を調べて推計している。
7月は6月より8439億円増え、3月から5カ月続けての増加になった。ここ数年は10兆~12兆円台が多かったが、昨年から増え始めてついに16兆円を超えた。統計を取り始めた09年1月以来最も多い。
背景には、景気対策のための公共事業の急増がある。今年7月に建設業界が受注した公共工事額は前年同月より24・1%増の1兆7097億円だったのに対し、7月に進んだ工事は6・3%増の1兆4855億円分だった。大手ゼネコン幹部は「人手が集まらず、工事のペースをこれ以上上げるのは難しい」と話す。受注しても人手不足などで予定通り工事に入れない業者が出ているという。
未消化工事は業者がすでに受注している工事だが、それ以前に「入札不調」もある。国や自治体が業者を選ぶための入札をしても、人手不足や資材高騰で工事費用が想定よりも高くなっていて、落札する業者が現れないという現象だ。
安倍政権は例年5兆~6兆円になる公共事業予算に加え、昨年1月には2・4兆円、昨年末には1兆円の公共事業を補正予算で打ち出した。昨年1月は「物価が下がり続けるデフレから抜け出すため」、昨年末は「今年4月の消費増税による景気へのショックを和らげるため」という理由だ。
安倍晋三首相は消費税率を来年10月に10%に上げるかどうかを今年末に判断する。再増税に備えた追加景気対策も想定され始めた。だが、工事が思うようにできなければ、景気を底上げする効果が薄まるおそれがある。
(上栗崇、野沢哲也)
http://news.asahi.com/c/agv6bCsEkPkVuUaC