九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働手続きは着々と進むが、住民の避難計画は依然として問題が多い。とりわけ10㎞圏外の病院や社会福祉施設については計画が策定されていない。原子力規制庁もこれを容認する実態が明らかになってきた。
国の指針「共通課題についての対応指針」(2013年10月)では、「避難準備重点区域(30キロ圏内)内の、病院等の医療機関や社会福祉施設等 は、入院患者・入所者の避難に関する計画をあらかじめ作成する。この計画においては、入院患者・入所者の受入れに足る十分な避難先施設をあらかじめ決めて おく」としている。また、自治体は計画通り避難が実施できない場合に備え、「調整委員会」等を事前に整備するよう定めている。
ところが8月21日、市民団体との会合の席上で原子力規制庁は、「5㎞圏外のUPZ(30㎞圏内)施設は、避難先や移動手段が決まっていなくても、 事故が起きた時に調整する仕組み(調整委員会など)さえ決まっていれば可」と説明。“仕組み”について市民が問うと、「コンピュータ・システム(を想 定)、詳細については確認中」とのみ答え、参加者を驚かせた。
関西電力の大飯原発や美浜原発などを有する福井県の場合、30㎞圏内のすべての病院・社会福祉施設については県がすべて受け入れ先を調整し、一覧表 を作成して公表している。「福井県では一覧表があっても要援護者の施設の避難計画は形式的であり、実際は問題が多い。しかし、鹿児島県はその形式さえも 整っていない」と、美浜の会の島田清子さんは指摘する。さらに、「原子力の規制を行なう規制庁が鹿児島県にあわせて指針を緩めるとは……。もっとも配慮し なければならない避難弱者の生命を蔑ろにするものだ」とも話す。
「再稼働」を進めるため、自らが定めた指針すら踏みにじる国や県の姿勢に、批判が高まっている。
(満田夏花・FoE Japan、8月29日号)