政府は8月29日、経済的に厳しい家庭の子供に対する支援施策をまとめた「子供の貧困対策大綱」を閣議決定した。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2012年時点で、全国の平均所得の半分を下回る世帯で暮らす18歳未満の子供の割合は、過去最悪の16.3%(前回比0.6ポイント増)。貧困に直面する子供は300万人以上で、6人に1人いる計算となった。
【貧困児童に学びの機会を】
日本の子供の貧困率が高いことは、海外でも注目されている。シンガポールのメディア『AsiaOne』は、8月25日付の記事で、「子供の貧困対策大綱」に関する読売新聞の報道を紹介している。
大綱は、子供の将来が生まれ育った環境で左右されたり、貧困が世代を超えて連鎖することを断ち切るという基本方針を打ち出している。重点施策は、「教育支援」「生活支援」「保護者への就労支援」「経済的支援」等である。
主な取り組みとしては、学校を「子供の貧困対策のプラットホーム」と位置づけ、スクールソーシャルワーカーが貧困問題や児童虐待などの相談に応じる。スクールソーシャルワーカーを現在の1500人から1万人に増やし、経済支援を受けている小・中学生の割合が高い地域に重点的に配置する。
経済的な事情で勉強が遅れがちな中学生に対しては、大学生や元教員らのボランティアが放課後や週末の空き教室で、教材費を除いて原則無料で勉強を教える体制を整える。無料補習制度がある中学校を現在の700校から5000校に増やす計画である。
【少子高齢化問題の方が深刻】
OECDや厚生労働省調査の貧困率は、絶対的なものではなく相対的なものである。子供の貧困率も相対的な数字であり、絶対的に深刻なのは少子高齢化問題であるという海外メディアの意見もある。
日本の人口は、どの先進国よりも急速に減少し高齢化している、とStephen Harner氏はフォーブス誌電子版で指摘している。2013年に総人口は24万4千人減少した。日本国民1000人当たり、新生児が8.2人誕生したのに対し、10.1人が死亡した計算になる。国連の予測によると、日本の人口は今日の1億2700万人から、2040年までに1億1500万人に減少する。
同記事では、政府の福祉政策の焦点を、熟年層から若年層にシフトし、特に子供がいる世帯には特別な財政支援をすべき、との主張が紹介されている。さらに、日本のワーク・ライフバランスを改善し、既婚女性の雇用推進などにも言及している。
【貧困期間が長いほど深刻な影響】
子供の貧困期間が長ければ長いほど、影響は深刻さを増す、『NZ Herald』は指摘している。日本と同じく、子供の貧困に悩まされているニュージーランドでは、2013年、全国の子供の24%を占める26万人が相対的な貧困ライン以下で生活していた。貧困家庭の子供の内、5人中3人が少なくとも7年間貧しさの中で暮らしている。
子供の貧困は、急速に少子高齢化社会が進む日本にとって、将来の貴重な労働力の損失にもつながる、深刻な問題といえる。解決に向けた施策が、海外からも注目されている。
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