介護や保育などの施設を運営している社会福祉法人の改革議論が始まった。税制優遇や補助金を受ける立場として本当にふさわしい事業を実施しているのか、透明性のある組織であるのか、などが問われている。
社会福祉法人制度は戦後の混乱期、海外からの引き揚げ者、戦災孤児など生活困難者があふれる中で生まれた。これらの人に対し、行政による対応だけでは限界があったことから、行政を補完する民間の組織に特別な法人格を与えたのが始まりだ。
混乱期を抜けた後も同法人は増え続け、今は全国に2万近くある。かつてに比べるとその位置づけも曖昧だ。特に2000年に介護保険制度がスタートし、介護事業に民間企業などが参入するようになると、矛盾が噴出する。
民間事業者は原則、介護保険から支払われる報酬で経営するが、社福法人は税制優遇と補助金を受けたうえで介護報酬も得て特別養護老人ホームなどを運営する形となったためだ。
優遇を受けた分で地域に貢献している社福法人も存在はする。しかし、1法人当たり3億円を超える内部留保を持つなど存在意義が問われるような状況が次々と 明らかになっている。財務諸表を公開する法人も半数ほどにとどまり、経営内容も不透明だ。理事長による法人の私物化も指摘される。
このような問題を踏まえ、厚生労働省の検討会は、社福法人に対して、法人運営の透明性の確保などを求める報告書をまとめている。当然のことだ。一層の改革を実現してほしい。
心身の障害や貧困など様々な問題から支援が必要な社会的弱者は今また増えている。だが、財政が厳しいため、これらの人のすべてを社会保障制度で救うのは難しい。優遇を受けた社福法人の出番はたくさんある。
営利を目的とせず、地域福祉の向上に役立つのが社福法人の本分。それができないなら優遇を受ける資格はないはずだ。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO76927200R10C14A9EA1000/