8日、埼玉県のJR川越駅で、足を蹴られる被害を受けた盲学校の全盲の女子生徒が取材に応じ、「私たちにとって白いつえは目の代わりです。視覚障害者のことを理解してほしい」と訴えました。
この中で、女子生徒は「正面から来た人が白いつえにつまずいて転んだ気配がしました。その後、歩いていると追いかけてきて右足の膝の裏を蹴られました。とにかくびっくりして怖くなりました」と当時の状況を語りました。
そのうえで、「後輩たちが同じような経験をしないよう、被害を訴えることにしました。私たちにとって白いつえは目の代わりで、点字ブロックは道を歩くための道しるべです。視覚障害者のことを理解してほしい」と訴えました。
「啓発活動してきたのに残念」
足を蹴られる被害を受けた女子生徒が通う、埼玉県立の盲学校「塙保己一学園」の荒井宏昌校長は「生徒から被害を聞いたときは驚き悲しく なりました。視覚障害のある人への理解を深めてもらうため啓発活動をしてきたのに、このような事件が起きて残念です。視覚障害者は点字ブロックを頼りに歩 いていて、目が見える私たちが一歩、道を譲ればぶつかることも危ない思いをすることもありません。このようなことがニ度と起こらないように活動を続けてい きます」と話していました。
視覚障害者団体「トラブル後を絶たず」
全日本視覚障害者協議会の代表理事を務める田中章治さんは「点字ブロックの上は、私たちにとって安全な場所であるはずで、とても残念で強い憤りを感じます」と話しています。
協 議会によりますと、最近は、目の不自由な人が点字ブロックの上に置かれた自転車や看板などにぶつかって倒してしまったとき、「1人で歩くな」などと心ない ことばをかけられるケースや、視覚障害者用の白いつえに歩行者や自転車がぶつかって、つえが飛ばされたり折れたりして立往生してしまうケースなど、トラブ ルもあとを絶たないということです。
また、田中さんはことし7月、さいたま市の全盲の男性が連れていた盲導犬が、何者かに刺されてけがをしていた ことについても触れ、「障害者を狙った事件が続かないか心配で、外出するのを差し控えるようになります。外で困っているときに声を掛けてくれる人が多く なっている一方で、中にはゆとりのない人もいます。弱者への思いやりを持ってもらって、視覚障害者の社会参加を理解してほしいと思います」と話していまし た。
同じような「危害」ないか調査へ
全盲の女性が足を蹴られた今回の事件を受け、埼玉県の視覚障害者の団体は、同じように視覚障害者が危害を加えられたり、嫌がらせを受けたりした事例がないか、緊急の聞き取り調査を行うことになりました。
調査を行うのは、埼玉県内の200人余りの視覚障害者で作る埼玉県視覚障害者福祉協会です。
埼玉県内では、全盲の女性が何者かに足を蹴られた8日の事件のほかにも、ことし7月、全盲の男性が連れていた盲導犬が、鋭いもので腰の辺りを刺される事件が起きています。
このため協会では、同じように視覚障害者が危害を加えられたり、いやがらせを受けたりした事例がないか、緊急の聞き取り調査を行うことを決めました。
埼玉県視覚障害者福祉協会の岸邦久会長は「被害が続き残念だ。駅など混雑する場所では、つえの振り幅を小さくして、周りに気を配っているが、それでも引っかかってしまうこともある。安心して歩ける環境になってほしい」と話していました。
協会では、調査を通じて被害の実態をまとめ、視覚障害者への理解を広めていきたいとしています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140910/k10014503601000.html