貧困問題に関する優れた報道を表彰している市民団体「反貧困ネットワーク」(代表世話人・宇都宮健児元日本弁護士連合会会長)は四日、今年の「貧困ジャーナリズム大賞」を発表し、都内で授賞式を開いた。
生活保護法改正案の問題点を報じ続け、政府の法案修正につなげた東京新聞(中日新聞東京本社)の上坂修子(うえさかなおこ)論説委員に貧困ジャーナリズム賞が贈られた。
上坂氏は今年七月まで在籍した政治部で主に社会保障問題を担当。生活保護の不正受給防止を理由に厚生労働省が進めようとした生活保護法の見直しは、生活保護を受給できなくなる家庭を増やし、貧困の拡大につながると指摘し続けた。
大賞にはインターネット上で生活保護制度の問題点を指摘し続けたジャーナリストのみわよしこ氏、貧困の現場を丹念に歩いて報じた下野新聞社の「子どもの希望」取材班が選ばれた。
◆困窮者の視点に立ち報道
四日に都内で開かれた「貧困ジャーナリズム大賞」の授賞式で、選考に携わった水島宏明法政大教授は、本紙の上坂修子論説委員の生活保護法見直しをめぐる報道について「改悪だと明確にし、一面に次々と記事を掲載して多角的な視点で報道した」と述べた。
授賞理由は「生活保護の不正受給防止に偏重する(厚生労働省の)『改革』が、困窮者に与えるマイナス影響を繰り返し警告した」こと。
上坂氏は授賞式とその後のシンポジウムで「生活保護の政策決定で、信じられないぐらいのずさんさに不信感が募った」と述べた。さらに「弱い立場の人々の側に立った報道を心掛けていきたい」と語った。
対象となった報道は二〇一三年五月、生活保護法改正案の閣議決定を前に、厚労省が申請手続きの厳格化を改正案に盛り込んだ事実を指摘。生活保護を受給できなくなる家庭が続出すると指摘し続け、与野党による法案修正につなげた。
法案成立後の一四年三月には、与野党の修正内容を無視して、同省が省令案にあらためて申請手続きの厳格化を盛り込んだと報じた。同省には千百件を超えるパブリックコメント(意見公募)が寄せられ、政府は省令案を見直した。
<受賞一覧> みわよしこ氏、下野新聞社「子どもの希望」取材班、上坂氏のほか、受賞した団体、個人は次の通り。
貧困ジャーナリズム特別賞 さいきまこ(漫画家)、NHK「ハートネットTV」取材班▽貧困ジャーナリズム賞 陸田元一(NHK)、秋山浩之 (TBS)、米沢秀敏(山陽放送)、蒔田備憲(毎日新聞)、今村優莉(朝日新聞)、竹次稔(西日本新聞)、横田増生(ジャーナリスト)、野村明弘(週刊東 洋経済)=敬称略、複数人で受賞の場合は筆頭者のみ
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014090502000258.html