車いすを使っている高齢者と一緒にマイカーで外出する機会が多いなら、乗り降りしやすい福祉車両を検討してはどうだろう。購入の際は、安全に乗降できるか、介助者がスムーズに操作できるかなどを確認することが重要だ。
埼玉県所沢市の男性(67)は、手足にまひがあり、外出に車いすを使う。2年前、後部からスロープで車いすごと乗車できるワンボックスカーを購入した。家 族は「これまでは、車に乗る際に私たちが体を支えるなどして介助していたが、その労力が減った。一緒に外食に出かける機会が増えました」と喜ぶ。
福祉車両は、車いすの利用者が乗り降りしやすいように、通常の乗用車の一部を改造した車だ。自動車メーカー各社が取り扱っている。
国立障害者リハビリテーションセンター副理学療法士長の岩崎洋さんによると、車いす仕様車と乗降補助装置付車の2種類に大別される。
車いす仕様車は、後部から車いすのままスロープやリフトで乗降でき、車いすから自動車に乗り移るのを介助したり、車いすを車内などに収納したりする手間が 省ける。走行中は車いすをフックで固定するが、車の座席よりも揺れが伝わり、体に負担が大きい。長時間の移動には向かない。
乗降補助装置付車は、助手席や後部座席が回転したり、回転して車外にせり出して昇降したりする。車の座席に座るので快適で安全性も高い。ただ、座席の耐荷重は100キロ以下で、頭上や足元の空間は狭い。体重の重い人、首やひざなどの関節が曲がらない人は使えない。
それぞれ一長一短があるので、「高齢者の体の状態や介助者の使い勝手などを考え、実際に乗り降りを試したうえで選んでほしい。かかりつけの医療機関があれば、理学療法士や作業療法士に相談を」と岩崎さんは助言する。
操作の確認には、福祉車両を用意したショールームなどに出向く。トヨタ自動車の福祉車両の乗降や操作を試せるショールーム「トヨタハートフルプラザ神戸」 (神戸市中央区)の店長、大国雅弘さんは「普段使っている車いすやつえなどを持って高齢者と一緒に来てください」と話す。
中、小型車の車いす仕様車の中には、開口部が狭いものもあり、車いすの大きさや乗せる人の体格によっては、その人を乗せられないことがあるので注意したい。車いすにフックがきちんとかけられるかなども確認する。
乗降補助装置付車も体格によって、乗降時に車体に体がぶつからないよう、膝を曲げたり身をかがめたりしなくてはならない場合がある。無理な動作をせずに乗り降りできるかをチェックする。
大国さんは「安全で快適に移動するために、納得いくまで装備を確認してほしい。要望に応じ、足置きなどのオプションを取り付けることもできます」と話す。
福祉車両は通常、同型の一般車より10万~150万円ほど割高だ。一方、大半の車が消費税は減免される。自動車税、自動車取得税などは自治体によって異なるので、都道府県税事務所などに問い合わせるとよい。
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