2015年度の全国学力調査の小学6年生分の採点や集計を委託する一般競争入札で、通信教育大手ベネッセコーポレーションが落札した。ベネッセは7月に顧客情報が大量に流出して情報管理のあり方が問題になったが、今回の受注は現在の学力調査が始まってから9年連続。文部科学省は今月中にも契約を結ぶ方針だが、保護者の不安に配慮して経緯を説明するよう求める声もある。
入札があったのは8月28日で、2社が参加した。一般競争入札方式を導入した第2回の08年度分から1社応札が続いていたが、今回、初の複数応札となり、ベネッセが選ばれた。文科省の担当者は選定理由について「採点などの技術と入札価格の両方を点数化して判断した」と話している。
ベネッセをめぐっては、通信講座などのサービスで顧客の個人情報の流出が7月9日に明らかになった。これを受けて文科省は、4月にあった学力調査で情報が漏れていないか調べたところ、流出した顧客情報などと学力調査では管理するデータベースが異なることを確認し、情報漏洩(ろうえい)はないと判断したという。
下村博文・文科相は7月の記者会見で「今後厳格な情報管理のもとで事業が実施されるよう強く指導したい」と話し、入札でベネッセを排除しなかった。
ベネッセは朝日新聞の取材に対し、情報流出事件について陳謝したうえで「全国学力調査のデータ処理は安全性が確認できている」と説明している。
小学校の学力調査は国語と算数の2教科が基本だが、15年4月に実施される予定の来年度は、全員参加で国・算・理3教科と過去最大規模の調査になる見通し。文科省は準備と実施にかかる費用として、今年度予算に前年度比約10億円増の約62億円を盛り込んでいる。
学力調査の入札は1社だけしか応札しないケースが多く、落札率が99%を超えることがあるなど高止まりが続いている。(高浜行人)
■なぜ選んだのか、文科省は説明を
お茶の水女子大の耳塚寛明副学長(教育社会学)の話 個人情報流出を招いた業者が落札することで、不安を感じる保護者もいるだろう。文科省はただ入札結果を公表するだけでなく、なぜベネッセを選んだのか、情報流出の心配はないのか、説明する責任がある。全国調査の記述問題を採点できる業者は限られるため一部に偏りやすく、別の業者にも技術を育ててもらう工夫が求められる。そもそも学力調査には、教科の拡大や新しい技術の導入といった改善や研究が必要ではないだろうか。
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