[ カテゴリー:福祉 ]

「障害者スポーツを事業として成り立たせる」 伊藤数子さん

障害者スポーツの普及に取り組んできた実績を買われ、張富士夫氏、王貞治氏ら著名人と並び、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の顧問に名を連ねた。「パラリンピックは障害者スポーツの魅力を日本中に伝える大きなチャンス」と早速、アイデアを練る。

NPO法人「STAND」代表理事、伊藤数子さん=写真 井口和歌子

NPO法人「STAND」代表理事、伊藤数子さん=写真 井口和歌子

会社勤務を経て、28歳の時に情報通信系の企画会社を起業した。障害者スポーツに本格的に携わるきっかけは03年、仕事で知り合った電動車いすサッカーのチームで、難病の選手がドクターストップで、せっかく切符をつかんだ全国大会に行けなくなったことだった。

仲間の試合を見せてあげたいと、思いついたのがインターネット中継。本人はもちろん、関係者から大きな反響があり翌年も実施することに。3回目の05年、「これはボランティアでは続けられない」と感じてNPO法人STAND(東京・渋谷)を設立した。

以来、会社経営と二足のわらじを履きながら障害者スポーツの広報に尽力する。ネット中継では、車いすテニスや水泳など約20種類の競技を扱ってきた。10年には障害者スポーツのポータルサイト「挑戦者たち」を開設し、アスリートへのインタビューや競技大会の情報などを発信している。

「障害者を見せ物にするのか」。長く「福祉」としてとらえられてきた障害者スポーツだけに、ネット中継を始めた頃は批判も受けた。迷いを晴らしてくれたのは、一流の障害者アスリートが見せる圧倒的な競技の魅力だった。

障害のハンディを乗り越えた人々の最高水準のプレーとドラマは、多くの夢と感動を呼べるはず。「障害者スポーツは、ファンや企業が支える価値のある事業として成り立つ」。今は自信を持って主張する。

東京パラリンピックを盛り上げるファンを育成しようと、秋からは障害者スポーツを見たり、選手と触れあったりする一般向け講座の開催を予定。「一生懸命頑張っています、というだけでは人は呼べない。どんどん仕掛けていかないと」

私生活では会社員の夫と2人家族。週末にはイベントなどで一番地味な仕事を担ってくれる「ありがたい存在」だ。

(木寺 もも子)

伊藤数子(いとう・かずこ) NPO法人STAND代表理事。新潟県生まれ。新潟大工学部卒。1991年に金沢市で起業した企画会社、パステルラボ社長も務める。52歳

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFE25H0G_W4A820C1TY5000/

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