社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の福祉部会は27日、介護や保育を手掛ける社会福祉法人(社福)の改革に向けた議論を始めた。社福は税の減 免や補助金を受けつつ、特別養護老人ホームの運営などで得た黒字を内部留保に蓄えていると批判が強い。厚労省は地域貢献の義務付けや透明性向上で批判をか わす考えだが、中途半端さは否めず、課税強化案も浮上しそうだ。
27日の福祉部会では、社福側の委員が「換金できる資産は少額だ」「赤字 経営の事業もある」などと主張し、内部留保批判をけん制した。これに対し松山幸弘委員(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は「年間売り上げ以上の現 預金を持つ社福が、補助金をもらうのは理解できない」と改めて疑問を呈した。
社福は原則非課税だ。飲食や物品販売など一部の収益事業には 税がかかるが、税率は通常の法人に比べて低い。施設整備などで国や自治体の補助金や低利融資も受ける。優遇と引き換えに不採算の福祉を担うはずだが、介護 や保育で企業と競合している。運営をほぼ独占する特養ホームで、毎年の黒字を積み上げた「内部留保」は、厚労省の調べでは1施設あたり約3億円に上る。
財務省や政府税制調査会(首相の諮問機関)は社福への課税強化を検討。社福は各政党や自治体の首長の支持勢力でもあり、実現への政治的ハードルは高いもの の、年末の政府・与党の税制改正論議に浮上する可能性がある。厚労省は社福の優遇税制などの見直しには消極的で、代わりに財務諸表の公開や、生活困窮者へ の援助などを義務付けて理解を得たい考えだ。ただ、介護や保育への企業参入が広がるなか、社福だけに過度な優遇をする意義は薄い。
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