多数の死者・行方不明者を出した広島市の土砂災害で、同市安佐南区の避難所に27日までに、福井大医学部の医師らの助言で計400個の段ボール製の簡易ベッドが導入された。医師は「避難者の病気や生活機能低下の予防につながる」と期待している。
災害時の避難所では、住民が床に直接シートなどを敷いて雑魚寝状態の生活を強いられる。避難生活による健康への影響を研究している福井大医学部地域医療推 進講座の山村修講師によると、床にたまったほこりを吸い込むなどして、避難者がかぜやぜんそくにかかるケースが多い。2011年の東日本大震災の際、山村 講師らが宮城県石巻市内の避難所で調査した患者のうち、約3分の1が上気道炎にかかっていた。
また、大震災時に避難所で過ごした高齢者 の約6割に歩行困難などの生活機能低下が起きていたことが、国立長寿医療研究センターなどの調査で確認されている。狭いスペースで雑魚寝するため、体を動 かす機会が減り、心肺機能や筋力が落ちるのが要因という。エコノミークラス症候群につながる血栓(血の塊)もできやすくなる。
段ボール 製の簡易ベッドは高さ約50センチあり、ほこりを吸い込みにくい他、高齢者でも立ったり座ったりしやすい。「生活機能の低下は急激に起こる。災害が起きて から1週間以内に簡易ベッドを導入することが重要」と山村講師。23日に段ボールメーカーや他の研究者とともに広島市安佐南区などの避難所を回り、行政側 に導入を働き掛けた。
当初は「(現地で)簡易ベッドの存在や利点が知られていなかった」が、避難者に実際に使ってもらい、必要性をアピールして導入が決まった。広島県と大阪府のメーカーが専用キットを供給し、26、27の両日、同区の佐東公民館に搬入された。
福井県では、あわら市や大野市などがメーカーと優先提供の協定を結んでいる。全国的には大阪府や横浜市といった大都市でも導入が進んでいる。山村講師は 「避難者1人当たりのスペースは(ベッドの有無で)ほぼ変わらず、場所は取らない。自治体にとっては備蓄の負担がない」と利点を強調する。「特に高齢者に は効果が大きい。災害関連の病気や避難所で亡くなる人を少しでも減らすために、簡易ベッドを積極的に導入してほしい」と話している。
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