STAP細胞はあるのかないのか――27日発表した検証実験の中間報告で、理化学研究所は判断を示さなかった。存在を確認できないのに、実験を継続する理研に対し、冷ややかな視線も注がれる。世界の研究者も関心を失いつつある。
「いま話しているのは(STAP細胞が)一番できにくいとの情報のあるマウス。それ以外の条件も試す余地はある」
理研が開いた検証実験中間報告の記者会見。「できていないのをマウスのせいにするのはおかしくないか?」といった質問が相次ぐなか、発生・再生科学総合研究センター(CDB)の丹羽仁史プロジェクトリーダーらは実験継続の意義を強調した。
しかし、科学界からは冷ややかな声も聞かれる。
万能細胞に詳しい京都大再生医科学研究所の末盛博文准教授は「初期の実験でつまずいているのはかなり深刻な状態。今後は再現ではなく、否定実験に変わってしまうのではないか」。九州大の中山敬一教授は「論文の条件で22回実験をしてできないならば、『STAP細胞はない』と言っていい。国民の税金を使って検証実験を続けることはやめるべきだ」と話した。
1月に論文が発表された直後は「生物学の常識を覆す」と称賛され、将来の再生医療につながる可能性にも期待が集まった。世界中で再現実験が試みられた。だが、これまでに成功例はない。7月の論文撤回以降、科学界は世界的に関心を失いつつある。
ブログでSTAP細胞の情報を発信し続けている米カリフォルニア大学のポール・ノップラー准教授は「理研が正式に『存在しない』と宣言するまでの最後の望みになるかもしれない」としたうえで「すでに科学界の多くは少し前にそういう結論に達していると思う」と記した。
関西学院大の関由行准教授も、ネット中継で理研の会見を聞いて「やはり」と思ったという。独自に再現実験に取り組んだが、論文の手法では成功しなかったからだ。ただ、実験継続が無意味とは思わないという。「さまざまに条件を変えて実験して、百%できないという確信が持てるまでは理研も『できない』と言い切れないだろう」
STAP細胞の問題は、京都大の山中伸弥教授が開発したiPS細胞を用いた研究にも影響を与える。CDBはiPS細胞からつくった目の網膜の組織を使う世界初の臨床研究に取り組む。月内にも第1号の患者に移植を実施する予定だったが、ずれ込んでいる。
■理研が改革案、研究室半減など
小保方晴子氏が所属する発生・再生科学総合研究センターの運営体制などを見直す理研の改革案が、27日発表された。改革案では、センターの名称を11月までに変更。センター長直轄のユニットリーダーやシニア研究者中心のプログラムを廃止する。理研本部には不正防止の新組織を設けるという。ただ理研が開いた会見では、半減させる約40のセンター研究室の具体的な再編案は示されなかった。組織上はセンターを離れても同じ建物に入ったままになる研究室もあるという。
野依良治理事長には進退を問う質問が相次いだ。野依理事長は「改革の陣頭指揮をする責任がある」と述べ、辞職を否定した。
理研改革委員会の委員長として、センター解体などを6月に提言した岸輝雄・新構造材料技術研究組合理事長は「改革案はあくまでスタート。本当に実行されるかが大事だ」と語った。
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