がんの予防や早期発見、治療、患者への接し方を子どもに正しく理解してもらおうと、文部科学省が小中高校でのがん教育の基本方針づくりを進めてい る。知識を広げ、社会全体の検診率向上につなげるとともに、患者への偏見をなくす狙い。来年春までにとりまとめ、2016年度改定を目指す学習指導要領に も盛り込みたいとしている。
小中高校では保健の授業でがんを生活習慣病として教えていた。しかし、政府が12年に策定したがん対策推進基本計画は、子どもたちの理解を深めるには不十分と指摘。ネットなどで混乱した情報が流れているとして教育の改善を求めていた。
基本方針は、がんの知識を「基礎的な教養」とし、年齢に応じて指導内容を定めることにしている。今年7月には、学校関係者や医師らの有識者会議を設置し、道徳や総合学習の授業でがんを扱えないか検討中だ。
また各地の小中高校で今秋から3年間、医師やがん経験者ら外部講師が参加するモデル授業を実施。教育方法の改善や教材開発につなげる。
がん患者らでつくる愛媛がんサポートおれんじの会の松本陽子理事長は「病気の知識を学ぶだけではなく、がんの経験者から話を聞き、自分や家族の身に起こりうると学ぶことが大事だ」とがん教育に期待する。
がんは日本人の死因の3割近くを占めるが、検診の受診率は、直近の国民生活基礎調査では最も高かった肺がんでも4割程度にとどまっている。〔共同〕