学校給食の定番メニューといえば「牛乳」。長らくカルシウム源とされてきたが、新潟県三条市は12月から「牛乳なし」の給食を試みることにした。こ れまでも、完全米飯給食を導入するなど食育に熱心に取り組んできた三条市。今回の「牛乳なし給食」と食育にはどんな関係があるのだろう。
「ご飯が中心の和食に牛乳は合わない」。三条市が給食から牛乳を外すことにしたきっかけは、保護者らからのそんな声だった。
市は2003年度から米飯給食を大幅に増やし、08年度にはパンや麺の日がない完全米飯給食へ移行。おかずも魚やつくだ煮、みそ汁など和風を増やしたため、牛乳よりお茶が合う献立となっている。
さらに「牛乳を1パック200ミリリットル飲むとおなかに入る食事量は当然減る。まずは主食やおかずをしっかり食べる習慣が、子どもの発育に大切」(食育推進室)との狙いもある。
市が目指すのは、給食を「生きた教材」と位置づけて、望ましい食習慣を定着させること。「牛乳なし」もその延長線上にある。
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一方、カルシウム不足を懸念する声もある。そこで市は、休み時間などに牛乳を出す方法を試したこともあったが、学校の負担が大きく断念した。
今回は、小魚やゴマのふりかけなどカルシウムに配慮した献立を充実させるほか、米飯やおかずの増量で補う計画。その分、給食費がかさみそうだが、牛乳は1 パック約50円で、小学校の給食費(1食250円)の5分の1を占めている。牛乳代が浮けば、他の食材の購入に充てることができるという計算だ。
ただし、今回の試みは4カ月間の限定。牛乳がないことによる残食の変化な
どを検証し、その後も継続するか判断するという。
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そもそも法律上、牛乳を給食から外していいのか。
学校給食法の施行規則では「完全給食(主食、おかず、牛乳)」「補食給食(牛乳とおかずなど)」「ミルク給食」と区分され、いずれも「牛乳」が例に挙げられている。
その点、文部科学省学校健康教育課に確認すると、「学校給食法は栄養価や食習慣について目標を示しているが、個別食材の使用に決まりはない。牛乳がないと学校給食として認められないということではない」という見解だった。
戦後、米国の援助によるコッペパンと脱脂粉乳で広まった学校給食。現在、週3回以上の米飯給食を行う学校は9割に上るが、牛乳がお茶に代わることはなかった。
「学校給食と子どもの健康を考える会」代表で管理栄養士の幕内秀夫さん(61)=東京=は「日本に約5万5千人いる100歳以上で、牛乳を飲んで育った人 はほぼゼロ。鉄分など他の栄養も足りないのに、牛乳のカルシウムを偏重して食べ合わせを二の次にしてきたことの方がおかしかった。学校給食の慣習に一石を 投じる試み」として三条市に注目している。
=2014/08/06付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/feature/life_topics/article/106041