長崎県佐世保市で、同級生を殺害したとして高校1年の女子生徒(16)が逮捕された事件に、地元の学校が揺れている。2003年に男児誘拐殺人(長 崎市)、04年に小6女児殺害(佐世保市)と、少年少女が容疑者となる事件が発生するたびに「命の教育」が強調され、追加対策が実施されたが、教員は「こ なせない」「限界だ」と疑問視。専門家は学校が子どもとじっくり向き合う原点に戻るよう求めている。
▽理解支援シート
「誰かに助けを求められるか」「どこに苦しみやストレスを抱えているか」。用紙にチェック項目が細かく並ぶ。長崎県教育委員会が05年、小中学校に導入した「子ども理解支援シート」だ。
表面からは見えない、心の状態を学期に1回程度確認し、校内で情報共有するようにつくられたが、1学級分を書き込むには数日かかり、昼休みや放課後に子どもと話す貴重な時間が奪われると指摘する教諭もいる。
佐世保市立中の50代の男性教諭は「ほぼ活用したことがない。教員同士の直接の情報交換がずっと役立つ」と話す。
市は小6女児殺害事件が起きた6月を「いのちを見つめる強調月間」にしている。生命の大切さを考える講演会や道徳授業の公開をしてきたが、教員からは「日々の教室での出来事から命の大切さを伝えていくべきだ。これ以上、新しい対策は必要ない」との声が多く上がっている。
▽昆虫や動物、解剖
逮捕された女子生徒がネコの解剖をしていたという報道があった後、40代の小学校男性教諭は、保護者から「子どもが昆虫や小動物を解剖している。どうしたらいいか」と相談を受けた。
担任をしているクラスには、ほかにも学習やコミュニケーションが困難な子がおり、対応に苦慮してきた。「一人一人を見守るには、今の40人学級では多すぎる。専門家と連携したケアが必要だ」と話す。
非行克服支援センター(東京)の 能重真作理事長は「教員がもっとゆとりをもって、子どもが抱えているものを見つめてほしい。『命の教育』に力を入れても、再び事件が起きてしまったことを 真摯に振り返るべきだ」と話している。
(共同通信)
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