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災害情報をネット提供 ヤフーなど大手、自治体と連携

インターネット検索サイトと協定を結び災害情報を提供する自治体が少しずつ増えている。情報の伝達手段を広げる意味が自治体にはあるが、どこまで情報を開示するかなどの課題もある。住民に使ってもらうインフラになれるだろうか――。

過去最強クラスと警戒された7月上旬の台風8号。日本列島で猛威をふるい始めると、インターネット検索サイト・ヤフーの災害ページに、各地の避難情報が並んだ。

「7月9日15時20分 新潟県長岡市 避難準備」「7月10日16時00分 長野県南木曽町 避難勧告」……。

自治体が提供した災害に関する警戒情報をスマートフォン(スマホ)やパソコンを通じてリアルタイムに見ることができる。

ヤフージャパンが気象庁から受けた地震や津波の情報をホームページ(HP)に掲載を始めたのは2004年から。さらに個別の自治体との連携を始めたのは、11年3月の東日本大震災がきっかけだ。

震災発生直後、アクセスが集中した官邸HPなどの複製(キャッシュ)を設置。避難先を検索できる「避難場所検索」も公開した。当時は自治体職員も震災対応に追われ、スムーズに情報提供が進まなかったが、協定によって連携を強めてきた。

名古屋市は グーグルと6月26日、ヤフーとは7月1日に、それぞれ協定を結んだ。ヤフーは災害時、避難情報などが載った市のHPに接続が集中して閲覧できなくなるこ とを防ぐために、HPの複製をつくってアクセスを分散させる。グーグルも、災害専用サイト「クライシスレスポンス」に道路などのライフライン情報を載せ る。安否確認ツールの「パーソンファインダー」を使えば、市がまとめた避難者情報を見ることも可能だ。

サービスはヤフー、グーグルの無償提供。ヤフー広報は「インターネットサイトとして正しい情報を発信したい。社会貢献の一環として考えている」という。自治体の側も「消防無線、テレビやラジオ、SNSなど、災害時の情報発信手段は複数もっておきたい」(名古屋市)との狙いがある。

現在、ヤフーと協定を結ぶ自治体は全国に200弱、グーグルは25ほど。東海3県でも約30の自治体が協定を結んでいる。名古屋市の担当者は「若者などはスマホを使って情報収集するのが得意。サイトが一つのきっかけになって情報が広がっていけばいい」と期待する。

■周知や個人情報の扱い課題

情報発信の幅を広げるネットのサイトだが、上手に使いこなすには課題もある。

たとえば、グーグルの「パーソンファインダー」には、自治体から避難者名簿を提供することが想定される。サイトには避難者の氏名、性別、年齢、住所など複数の項目が登録できるが、「個人情報なので、どこまで情報提供すべきか」(名古屋市)と悩む声も現場からは出ている。

避難所情報を載せた地図も、日常的に利用することが多い「グーグルマップ」のサイトからではなく、災害専用のサイトを検索してアクセスしなければならない。災害専用サイトの存在を知らない利用者も多くいるとみられ、自治体は住民への周知も求められる。

速報性も重要だ。すでに解除された警報が掲載されるなどすると、誤った情報になる。自治体はすばやく情報提供し、サイト運営者も最新の状況に気を配らなければならない。

事情に詳しい通信業界からは、「ヤフーやグーグルはビッグデータを集めて自分のサイト価値を高め、なくてはならないインフラとして新ビジネスにつなげるのが狙いでは」との声もあがる。自治体とサイト運営者の双方に、当事者意識が求められる。(高橋諒子)

■グーグルと防災協定を結んだ全国の自治体

青森県岩手県宮城県東京都神奈川県山梨県岐阜県静岡県三重県京都府大阪府和歌山県徳島県さいたま市千葉市川崎市相模原市土岐市静岡市名古屋市蒲郡市大津市京都市、堺市、高松市

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