うつ病には「きっかけがあれば一時的に気分が良くなる」などのケースがあり、医学用語ではないが、“現代型”と呼ばれる。ストレス要因が大きく、抗うつ薬は効きにくい。
1.“現代型”と呼ばれるうつ病
“現代型”のうつ病という言葉が使われることがあります。これは、医学的な病名ではありませんが、一般社会では広く使われ始めています。うつ病は、几帳面や生真面目で、他人に気を遣い過ぎる人に多いとされますが、こうした特徴にあまり当てはまらないケースが“現代型”と呼ばれます。
“現代型”と呼ばれるうつ病でも典型的な症状の多くが現れ、そのためにつらさを感じ、日常生活に支障を来しています。自分の好きなことを行うなど何かきっかけがあると一時的に気分がよくなることがありますが、ほとんどの時間は憂うつで沈み込んでいます。ほかにも、「食べ過ぎ」や「眠り過ぎ」といった症状が現れる場合もあります。「若い人に多い」「対人関係に敏感である」「うまくいかないときは自分ではなく周囲の人を責める傾向にある」なども特徴です。
2.“現代型”と呼ばれるうつ病の治療
“現代型”と呼ばれるうつ病は、基本的に抗うつ薬は効きにくく、ストレスなどの心理的要因や、性格的な要因が関係していることが多いとされます。薬物療法だけで改善しようとせず、薬は補助的な治療と考えたほうがよいでしょう。
ただ最近は、双極性障害の治療で使われる薬が効果的な場合があるといわれてきています。双極性障害は抑うつ気分だけではなく、活気があり過ぎる躁[そう]状態も現れるのが特徴です。うつ病とは病気の成り立ちも治療法もまったく異なる病気ですが、うつ病の患者さんの中には軽い躁状態を経験している人がいて、こうした場合は双極性障害の薬が効くことがあります。“現代型”と呼ばれるうつ病にはこのようなケースが多いといわれていますので、医師とよく相談してください。
3.認知行動療法が効果的
“現代型”と呼ばれるうつ病は薬が効きにくいため、精神療法が重要になってきます。中でも最近注目されているのが認知行動療法です。認知行動療法では、まず、現実にあった状況をノートに記し、そのときの気分を記します。そして、どんな理由からそう考えたのかを記入します。次に、それ以外の考えを探り、もしその場合だったらどのような気分になるかを記入します。このような作業を行うと、同じ状況であっても、考え方を変えることで気分が変わるとわかってきます。繰り返しこうしたトレーニングすることで、うつ病の症状が改善します。
4.日常生活で心がけること
うつ病の人には休養を勧めるのが一般的ですが、“現代型”と呼ばれるうつ病では、何もせずに休んでいることが必ずしもよいとは限りません。まずは起床時刻を決め、食事を規則正しくとるなど、生活のリズムを保ちましょう。なるべく外に出て人に会うことも勧められます。周囲の人は、患者さんが前向きな行動をとろうとしている場合には、その行動の背中を押してあげるような対応をとることが必要です。一時的に気分がよくなるためうつ病とは思えないこともありますが、病状によって患者さんが苦しんでいるのは事実です。周囲の人はそのことを冷静に受け止め、患者さんを見守ってあげることが大切です。
NHK「きょうの健康」2013年6月19日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20130619-h-001.html