うつ病でも軽症の場合は、いわゆるカウンセリングが治療の基本。薬は中等症や重症に比べより慎重に用いる。自分のものの見方を見つめ直す認知行動療法も効果が期待できる。
1.うつ病の診断と治療
うつ病は、強い憂うつ感や眠れないといった症状が続く病気です。代表的な症状は「抑うつ気分」と「興味や喜びの喪失」の2つで、さらに「食欲がない」「眠れない」「イライラする」「疲れやすい」「自分を責める」「集中できない」「死にたいと思う」といった症状もあります。これらのうち5種類以上あり、それが2週間以上続いて仕事や家事などに支障を来す場合にうつ病と診断されます。
人によって症状や状態はかなり異なるため、治療に当たっては「症状の重さ」「年齢」「もともとの性格」などを考慮する必要があります。薬をのんで安静にするといった治療が、必ずしもうまくいくとは限りません。大切なのは、患者さんごとのうつ病のタイプを見極め、それに合わせた治療が行われることです。日本うつ病学会が2012年にまとめた治療ガイドラインでは、うつ病を「軽症」と「中等症・重症」の2つに分け、それぞれの治療法について解説しています。
2.軽症のうつ病の治療方針
うつ病の治療は、薬物療法と精神療法の2本柱で行われ、重症度によって大別されます。近年、うつ病の患者数は増えていますが、特に増えているのは軽症のうつ病(前述の9種類の症状のうち当てはまる症状が5~6種類の場合)といわれています。軽症の場合、治療の基本はカウンセリング(精神療法の一つ)です。軽症の場合はカウンセリングが非常に有効で、一方、薬物療法の効果が明確ではなく、必要以上に抗うつ薬が使用されると無用な副作用を招く恐れもあります。そのため、軽症のうつ病に対する薬物療法は、特に慎重に行う必要があります。ただし、「過去に抗うつ薬が効いた」「うつ病の期間が長い」「睡眠や食欲の障害が重い」「イライラが強い」「過去に重症化したことがある」などの場合には、軽症でも薬物療法が行われます。また最近は、軽症のうつ病の場合は適度な運動を行ったほうが改善が見込めるという研究結果も報告されており、可能なときには適度な運動を行うことも勧められます。飲酒に頼らないことも重要です。
軽症の場合よりも重い、中等症・重症の場合には、積極的に薬物療法が行われます。薬物療法と並行して、カウンセリングや認知行動療法も行われます。
3.うつ病の精神療法
うつ病の精神療法として行われるカウンセリングは、主に支持的精神療法と心理教育に分類されます。支持的精神療法は、医師が患者さんの話をよく聞き、患者さんのつらさや苦しみを理解して共感する治療法です。心理教育は、うつ病やその治療法についてわかりやすく説明し、正しく知ってもらうことが目的です。カウンセリングでは医師と患者さんのコミュニケーションが大切です。気を遣う必要はありませんので、我慢せずに悩みを相談しましょう。
認知行動療法も精神療法の一つです。誰にでもものの見方には癖があり、そのため現実をゆがめて捉えてしまい、うつ病の発症に結びつくことがあります。認知行動療法は、そうしたゆがみをトレーニングで修正していく治療法です。
NHK「きょうの健康」2013年6月17日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20130617-h-001.html