■筋肉痛をおそれず、こわがらず、あなどらず
しばらく体を動かしていなかった人が運動を始めると、ほとんどの人が筋肉痛を経験します。筋肉痛は筋肉を動かすことで筋繊維に細かなキズ(微細損傷)が起こり、それを回復させるためにさまざまな化学物質が筋繊維に作用するのですが、その一つの反応として痛みを伴うことがあります。運動して筋肉を鍛えることは筋繊維を太くすることであり、筋力アップには欠かせない過程ですが、運動の翌日などに筋肉痛が起こってしまうと、運動に対して尻込みしてしまう原因にもなりかねません。
こうした筋肉痛を多少なりとも和らげるためには、運動後のクールダウンが欠かせません。使った部位を中心にストレッチを入念に行うことや、お風呂で軽く筋肉をほぐすことでも翌日の筋肉痛を軽減させる効果が期待できます。運動直後から痛みを伴う場合は筋繊維を痛めている可能性がありますので、氷などを使ってアイシングを行うとよいでしょう。
■昔の感覚と体のギャップを考慮しよう
学生時代にスポーツなどで体を鍛えていた人が以前と同じ運動を再開するとケガをしてしまったり、思うように体が動かなかったりということが起こります。これは頭の中では「スポーツをやっていた頃のよく動く体」の感覚を持っているのに、実際の体は運動をしなかった時期が長く続いた結果、以前と同じような動作ができないというギャップから起こると考えられています。速く走っているつもりなのに、まったく足がついてこない。必死になって足を動かそうとするのに思ったほど動いていないので、太ももの筋肉を痛めてしまった……というのもこれに当たります。
こうしたケガを予防するためには、以前と同じ運動を行うときに、運動量や運動負荷を軽めに設定することが望ましいでしょう。しばらくブランクがあるときは、一度軽めの運動から始めるようにして、自分の持つ運動感覚と実際の体の動きのギャップを大きく広げないように、段階を踏んで調整していくことが大切です。
■ランニングブームに乗る前に
今や国内外問わずさまざまな場所でマラソン大会が行われるほど、ランニング指向は高まりつつあります。毎年2月に行われる東京マラソンでは、約3万5千人ものランナーが東京都内を走るビッグイベントとなりました。こうしたランニングブームに触発されて、「走ってみようかな」とチャレンジする人も増えているようですが、安易なチャレンジでリタイヤしないよう、入念に準備を行ってから参加するようにしましょう。
マラソン大会のサポートを担当していると、「膝が痛い」「足が痛い」といって救護室を訪れる選手にあいます。事前に十分な練習を積んでいないと、筋力不足や柔軟性の低下によって簡単にケガをしてしまうことも。ブームに乗ってランニングを始めても、ケガをしてしまえば運動のメリットどころか、走らなきゃよかった……なんてことにもなりかねません。しっかりと計画を立てて十分な練習を積んでから、大会に臨むことを心がけましょう。
運動をする前のウォームアップが欠かせないように、しばらくぶりに運動を再開する場合は、より時間をかけて体と心を準備していく必要があります。大きなギャップをそのままにしておくのはケガのもと。これから始める運動にぜひ役立ててくださいね。
文・西村 典子(All About 運動と健康)
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