胃もたれ、早期満腹感、胃痛といった症状があるのに、内視鏡検査では異常がない機能性ディスペプシア。放置すると著しく生活の質が低下することがあるため、早期治療を。
1.機能性ディスペプシアとは
ディスペプシアとは、胃もたれ、早期満腹感、胃痛など、みぞおちを中心とするさまざまな症状のことを指します。こうした症状は胃潰瘍や胃がんなど胃の病気があれば現れますが、明らかな病気がないのにこのような症状が現れる人がいます。かつては、胃の炎症がないのに「慢性胃炎」と診断されていましたが、詳しく調べてみると胃の機能に異常が生じていることによって症状が現れていることがわかってきました。そこで、原因となる病気がないのに、胃もたれ、早期満腹感、胃痛といった症状が週に2~3回起こっている場合、機能性ディスペプシアという病名が使われるようになりました。機能性ディスペプシアは慢性的な病気なので、食べ過ぎなどで起きた一時的な症状は当てはまりません。的確な診断と治療のために、ガイドラインがつくられています。
2.機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアは「きちょうめんな人」や「周りに気を遣う性格の人」に起こりやすい傾向があり、多くはストレスをきっかけに起こります。それにピロリ菌の感染、食事など生活習慣の乱れ、胃酸の刺激などが関わって、胃の運動機能異常(食べたものの排出が遅くなる=胃もたれ、胃のふくらみが悪い=早期満腹感)や、内臓知覚過敏(胃酸に対して過剰に反応=胃痛)が引き起こされます。さらに、こうした症状がストレスになり、それがまた症状を引き起こすという悪循環に陥ると、つらい状態が長く続いてしまいます。症状を我慢せず、早めに医療機関を受診して、適切な治療を受けることが大切です。
3.診断と治療
診断には、前述したような慢性的な症状があることに加えて、胃の内視鏡検査で、胃潰瘍や胃がんなどの病気がないことを確認することが条件になります。
治療は薬物療法が中心で、胃の運動をよくする運動機能改善薬か、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制薬が第一選択薬となるのが一般的です。これらの薬で症状が改善しない場合には、漢方薬の六君子湯[りっくんしとう]などが使われたり、ストレスが関係している場合には抗不安薬が用いられることもあります。
ストレスや不安の解消だけで症状が和らぐことも多く、胃の内視鏡検査で胃潰瘍や胃がんなどの異常がないとわかることで症状がなくなる人もいます。
NHK「きょうの健康」2014年3月3日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20140303-h-001.html