“太もも”を中心とした下半身の強化を説いた健康法が、幅広い男女から高い支持を得ている。静脈の血液を上半身に押し上げるポンプである“太もも”は「第二の心臓」と呼ばれ、健康や長寿の秘密が隠されている。また“太もも”などの下半身の強化は、肩こり・腰痛・高血圧・糖尿病・狭心症・便秘・不眠などの症状の改善につながり、さらに太らない体質を作りダイエットにも大きな効果がある。ヒット書籍『太ももを強くすると「太らない」「超健康」になる』の著者で、ウォーキングの第一人者、東京学芸大学名誉教授・医学博士の宮崎義憲氏が、手軽に出来る簡単体操を交えながら独自の“太もも健康法”を語る。
ずっとねこ背だった人が、いきなり「良い姿勢」を取ろうとしてもなかなか、うまくできないかもしれません。
でも大丈夫です。とても効果的な「ねこ背矯正法」があります。それは腹式呼吸です。特に筋力が衰え始めた中高年者には効果的です。
ねこ背に腹式呼吸? まったく関係がないように思われるかもしれません。
ここでちょっと、中高年者に多く見られるねこ背の原因について説明しましょう。
実は中高年の場合、ねこ背の原因に腹筋や横隔膜の筋力の低下が加わっている場合が多いのです。
姿勢を支えている時は、背骨とその周りの筋肉だけが働いているのではありません。なんと腹圧(お腹の中の圧力)の力も働いているのです。心臓や肺を収めている胸部の骨格である胸郭は重力によって絶えず下に落ちようとしていますが、この腹圧によって、高さが保たれていることで、正しい姿勢が取れるのです。そして腹圧は腹筋や横隔膜の働きによって一定の圧が保たれています。
ところが加齢や運動不足から腹筋や横隔膜の筋力が低下してくると、腹圧も低下してしまいます。その結果、腹圧で胸郭をしっかりと支えることができず、胸郭が下がる。つまり、ねこ背になるのです。
そこで、ねこ背を治すためには、腹筋と横隔膜の筋力を強め、腹圧を高め、胸郭を持ち上げなくてはならないのです。
そして腹筋や横隔膜を鍛え、姿勢を改善させる簡単な方法が腹式呼吸なのです。
また、腹式呼吸は息を大きく深く吸って吐きます。大きく息を吸う時に腹筋と横隔膜が活発に動いて、胸郭を拡張させます。この時、筋力が低下していた腹筋と横隔膜の筋肉が鍛えられるのです。これらの筋肉の強化は腹圧を高めるので、自然と姿勢が良くなるのです。
ところで腹式呼吸は胸郭が上に持ち上がった状態でないとうまくできません。ねこ背の状態では胸部が持ち上がらないので、腹式呼吸ができないのです。ですから意識的に腹式呼吸をすると背筋が伸び、姿勢が良くなります。
ねこ背を治すには、まず腹式呼吸です。さらに効果的に肩こりや首のコリを改善する方法としてお勧めするのが「腹式呼吸歩き」です。文字通り腹式呼吸をしながら歩くのです。
ぜひ、腹式呼吸をしながら、手を大きく振って大股で歩いてください。この全身運動によって、コリの元凶となるねこ背を矯正するだけでなく、コリの直接的原因となる疲労物質を減らし肩こりの軽減や解消、予防につながります。
また、歩くこと自体で全身の血行が良くなり、重い頭を支えている僧帽筋などの筋肉に蓄積された疲労物質が血液とともに押し流されます。つまり、コリの原因が排出されていくのです。このように、いいことずくめの腹式呼吸歩きはいつでもどこでもできます。
注意点は腹式呼吸を大きく深く行うこと。女性は腹式呼吸が苦手な人が多いですね。腹式呼吸に慣れていない人は、最初はお腹に手を当てて、呼吸と連動して吸う時にお腹が膨らみ、吐く時にへこんでいるか確認しながら歩きましょう。
腹式呼吸歩きの最も確実な方法は歌を歌いながら歩くことです。歌を歌う時は誰もが、自然と腹式呼吸になっているからです。
なお、あまり速足ですと腹式呼吸ができません。普段歩いているペースで歩きましょう。いつも速歩きの人は、少しペースを落として歩いてください。
腹式呼吸歩きの歩行時間は5分でも10分でもよいのです。慣れてきたら、次第に時間を延ばしてください。繰り返していくうちに、いつのまにかねこ背が解消されて、良い姿勢になり、肩こりもなくなっていることに気がつくはずです。
※本連載は『太ももを強くすると「太らない」「超健康」になる』(宮崎義憲 著)からの抜粋です。
(東京学芸大学名誉教授・医学博士 宮崎義憲)
http://news.goo.ne.jp/article/president/life/president_12026.html