■どうして「意味のないこと」にハマってしまうのか?
フラストレーションがたまったとき、とりあえずその気持ちを落ち着かせようと、無意識のうちに「意味のない行動」を始めてしまうことがあります。
たとえば、今日中に仕事を終わらせなければならないのに、なぜか重い腰を上げられない……そんな葛藤を感じたときに、爪噛みをしたり、貧乏ゆすりをしたり、手元にあったプチプチ(気泡緩衝材)をつぶすことに熱中してしまったり……。このように、無意味な行動を繰り返してしまう人は少なくないことでしょう。
「こうしたらいいのにできない」といったフラストレーションに陥ったとき、その気持ちを落ち着かせるために、役に立たない紋切り型の反応を繰り返すことを「固着反応」と言います。その行動様式は、人によってさまざま。爪を噛んだり、貧乏ゆすりをしたり、髪の毛を指で回したり、ニキビをつぶしたり、指でテーブルを叩いたり、ぐるぐる歩き回ったり……、こんな行動の一つや二つ、誰にでも心当たりがあるのではないでしょうか?
このような固着反応自体には問題があるわけではなく、自然なストレス解消法の一つです。困るのは、その行為による「影響」の方です。
プチプチつぶしなどで無意味に時間を過ごしてしまえば、やるべきことが進まず、後で「しまった!」と後悔することもしばしば。爪を噛んだりニキビつぶしに熱中していると、爪が減って不格好になったり、ニキビ痕が残ったりしてしまいます。貧乏ゆすりやテーブル叩き、歩きまわる行動などは、オフィスなど公共の場所では、他人に迷惑をかけてしまうかもしれません。
このように、感情に任せて固着反応を繰り返していると、「大人としてはちょっと……」と、眉をひそめられてしまう結果となることが少なくありません。フラストレーションは、誰にでも訪れるもの。だからこそ、その場の感情だけに流されず、スマートに対処していくことを目指したいものです。
■1. その反応を始めたときに「気づく」
固着反応は、「絶対やらないぞ!」と構えていても、無意識のうちに始めてしまうもの。しかし、やったときに「あ、いつものヤツが始まったな」と気づくことならできます。
自分自身がとっさにとっている反応や行動様式を認識することを「自己覚知」と言います。この自己覚知は、自分自身の行動を客観的に捉え、その行動を修正するための第一歩となる気づきです。
自分の反応を客観的に把握できれば、問題解決の大部分が進んでいると言っても過言ではありません。まずは、自分自身のフラストレーション解消のパターン(爪噛み、貧乏ゆすりなど)を把握し、それがどんなシーンで起こるのか(あせっているとき、苦手な人に会ったときなど)を分析してみましょう。
■2. フラストレーションを「外在化」させる
やっかいな癖を持っている人は、「やめられない私ってダメ」という自責感を持っているものです。そのため、やってしまった自分を責め、その行為を強く禁じます。しかし、それがやりたい衝動をむやみに引き起こしてしまい、爪噛みや貧乏ゆすりを誘発するというループを生んでしまうのです。
このループから抜けるには、「フラストレーションがたまっている」という問題を「自分自身」と切り離して捉えることが大切。これを問題の外在化と言います。つまり、「自分が弱いから、爪噛みをしたくなる」のではなく、自分自身とその問題とを分けて考え、「フラストレーションがたまってるから、爪噛みをしたくなる」と捉えること。このように、問題を自分自身から切り離し、外在化して捉えれば、「問題に対処すること」をピンポイントで検討することができます。
■3. 「第2の対策法」に置き換える
固着反応は、無意識に選択している行為なので、「やめよう」と我慢しても、なかなかうまくいかないもの。我慢するより、その行為に気づいたときに、意識して「第2の対策法」に置き換えていくといいでしょう。つまり、「あ、爪噛みが始まった。フラストレーションがたまってるんだな」と気づいたなら、そこで別の気分転換方法を取り入れることです。
特に効果的なのは、その場を離れることです。進まない仕事にイライラして貧乏ゆすりが始まったら、少しの間、席を立つといいでしょう。環境を変えるだけで、気分はかなり変わるものです。
その他にも、深呼吸をする、ストレッチをする、ハンドクリームを塗る、コーヒーを淹れるなど、気分を変える方法はたくさんあります。このように、第2の対処法に置き換えることをクセづけしていけば、固着反応のエスカレートを防ぐことができます。うまくいけば、固着反応を始める前に「やりたくなる気持ち」に気づき、第2の対策法に置き換えられるようになるでしょう。
固着反応のような「恥ずかしい癖」は、誰でも一つや二つ持っているもの。とはいえ、スマートな大人になりたいなら、少しずつでも修正していきたいものです。紹介した3つのヒントは、今日から誰でも実践できるちょっとした心がけです。ぜひ意識して取り入れてみてはいかがでしょうか?
文・大美賀 直子(All About ストレス)
大美賀 直子
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140208-00000004-nallabout-hlth