脳梗塞と同じ症状が一時的に起こることがあるが、本格的な脳梗塞の「前兆」であることが多いので症状が消えても安心せず、必ずその日のうちに専門の医療機関へ行くべき。
1.脳梗塞の前兆
脳梗塞では、脳の血管が詰まり血流が途絶えて脳の一部が壊死しますが、一時的に脳梗塞と同じような症状が現れる場合があります。これを一過性脳虚血発作(TIA)と呼んでいます。TIAでは詰まりかけた血栓が短時間のうちに溶けて流れ血流が再開するため、通常、数分から数十分ほどで自然に治まるのが特徴です。
症状は「体の片側のまひ」「ろれつが回らないなどの言語症状」などで、脳梗塞とほとんど変わりませんが、片方の目だけが急に全く見えなくなることがあるのがTIAの特徴です。TIAの直後には本格的な脳梗塞が起こりやすいため、症状がすぐに消えても放置せずに、救急車を呼ぶなど急いで専門の医療機関を受診してください。
2.脳梗塞の危険性を検査
TIAが起こった場合、医療機関では、脳のMRI(磁気共鳴画像)や頸動脈のエコーによる検査が行われます。MRI検査で小さな脳梗塞が見つかった場合、本格的な脳梗塞を起こす可能性が非常に高いので、入院して緊急治療を受けます。
けい動脈のエコー検査では、けい動脈の動脈硬化、プラークの状態や狭さくの程度などを確認できます。けい動脈の動脈硬化が進んでいると、できた血栓がはがれて脳の血管に運ばれて詰まる危険性が高くなるので、適切な治療が必要です。
3.脳梗塞を防ぐために
TIAから脳梗塞が起こるのを防ぐ基本的な治療は、抗血小板薬(血液をサラサラにする)やスタチン(動脈硬化の進行を抑える)を服用する薬物療法です。けい動脈の狭さくが進んでいる場合は、手術(けい動脈を切り開いてプラークを取り除き内部を拡張するけい動脈内膜剥離術)や、カテーテルによるステント療法が行われます。手術は最も有効性の高い根本的な治療法です。
脳梗塞を食い止めるためには、原因となる病気や生活習慣への対策も重要です。高血圧や、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病などは厳重に管理するとともに、心房細胞がある場合はその管理も重要です。生活習慣では、食事・運動のほか、喫煙や大量飲酒を避けることも大切です。
NHK「きょうの健康」2014年1月7日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/kenkotoday-20140107-h-001.html