寒波の影響で気温が下がり、いちだんと寒さが厳しくなってきた。空気の乾燥も進む冬は、肌のカサカサや手あれに悩まされている人も多いのではないだろうか。放っておくとどんどん重症化していく「手あれスパイラル」の悪循環。これを断ち切る、正しいケアの方法を聞いてみた。
寒さと乾燥は肌のかさつきを招く
冬は気温や湿度の低下で、肌の水分が蒸発しやすくなり、かさつきが起こりやすくなる。このかさつきを放っておくと、皮膚が硬くなり、表面に亀裂が生じ、強い痛みを感じるようになる。いわゆる「ひび」「あかぎれ」が手の表面にいくつもできて、ひどくなった状態だ。
野村皮膚科医院院長の野村有子氏によると、モニター試験で手あれの状態を確認すると、痛みを伴うがんこなひび・あかぎれのある人は、同時多発的に色々な場所で亀裂が生じており、マイクロスコープで観察してみると、肉眼では見えにくいゴミや糸くずなどの異物が付着していたという。
「一旦亀裂が生じると、ますます手がかさつき、次から次へと亀裂を誘発する悪循環に陥ってしまいます」と野村氏。このような「手あれスパイラル」を断ち切り、重症化を防ぐためにも、乾燥が気になったら早めに正しいケアを行うことが大切だ。
手あれスパイラルを断ち切るハンドケア(1)
症状に合わせたハンドクリームを使う
普段、何気なく使っているハンドクリームも、成分により効果が違ってくるため、症状に合わせて使い分けることが重要。
「ひび・あかぎれがひどい場合には、尿素はしみることがあるのでので、ビタミン系・保湿系のクリームで水分・油分を補給します。かゆみがある場合にはかゆみ止めで治してから、毎日のお手入れで保湿をしていきます。ガチガチしたかかとやひざに、尿素系は即効性がありますので、これで角質がやわらかくなったらビタミン系・保湿系に切り替えて毎日ケアしていくとよいでしょう」(野村氏)
手あれスパイラルを断ち切るハンドケア(2)
ハンドクリームの塗り方を見直す
症状に合ったハンドクリームを選んだうえで、効果を最大限に得るためには、塗るタイミングや塗り方も大切だ。血行がよくなり、皮膚がやわらかくなる入浴後は特に効果的。入浴後から就寝前のリラックスタイムにハンドケアを取り入れよう。
「ひどい症状を改善させるためには、最初の3日間は特にクリームの量を意識してください」と野村氏はすすめる。人差し指の第一関節分(約2g)を両手に塗り、気になる部分には重ねづけをする。普段使っている量よりも、たっぷりつけると思ったほうがよさそうだ。症状が改善されれば、その後はいつも通りの使用量でよい。手袋をつけて寝れば、べたつきが気にならず、浸透も高まるため、寝ながら集中ケアができ、効果を実感できる。
また、ハンドクリームを塗る際、同時にマッサージをすると、さらに効果的。ハンドクリームの効果を高めるだけでなく、末端の血行改善や冷えの予防にもつながる。
手あれスパイラルを断ち切るハンドケア(3)
意外な盲点? 手の洗い方
間違った手の洗い方が、手あれの原因となっていることもある。寒いとつい熱いお湯を使いたくなるが、長時間お湯に肌をさらしていると、皮脂が奪われて乾燥を招く。手を洗うときはぬるま湯で洗い、ゴシゴシとこすりすぎないように。また、お湯を使うときは手袋をするのもよい。
公共のトイレなどに設置されているハンドドライヤーは便利だが、指先を乾燥させすぎてしまう傾向にあるため、手あれに悩んでいる人は使わないほうがよいだろう。手洗い後、髪や服で手を拭くのはもってのほか。自然乾燥は水気が蒸発する際に肌の水分や皮脂を奪うので、清潔なハンカチやハンドタオルを持ち歩き、速やかに水気をしっかり拭き取ることが、かさつきを防ぐことにつながる。
・ぬるま湯で洗い、こすりすぎない
・爪の周りや指の間などを忘れずに石けんで洗う
・ハンドドライヤーは使わない
・手洗い後、髪や服で手を拭かない
・清潔なハンカチ、ハンドタオルを持ち歩く
保湿や手の洗い方など、ちょっとした日常の行動を意識することで、手あれスパイラルは予防できる。乾燥が気になったら、早めのケアを心がけよう。
院長
野村有子さん
医学博士。慶応義塾大学医学部卒。横浜市に開業した医院には最新の肌診断機器を導入し、アトピー性皮膚炎患者専用モデルルーム、アレルギー対応カフェも併設。アトピー性皮膚炎や乾燥性湿疹を中心に、男女を問わず幅広い年代の皮膚疾患の診断・治療を行い、わかりやすい丁寧な指導が評判。