PRESIDENT BOOKS/PRESIDENT Online スペシャル 掲載
“太もも”を中心とした下半身の強化を説いた健康法が、幅広い男女から高い支持を得ている。静脈の血液を上半身に押し上げるポンプである“太もも”は「第2の心臓」と呼ばれ、健康や長寿の秘密が隠されている。また“太もも”などの下半身の強化は、肩こり・腰痛・高血圧・糖尿病・狭心症・便秘・不眠などの症状の改善につながり、さらに太らない体質を作りダイエットにも大きな効果がある。ヒット書籍『太ももを強くすると「太らない」「超健康」になる』の著者で、ウォーキングの第一人者、東京学芸大学名誉教授・医学博士の宮崎義憲氏が、手軽に出来る簡単体操を交えながら独自の“太もも健康法”を語る。
成長ホルモンという言葉をご存じでしょうか。
その名の通り、生まれてから思春期に至る成長期に大量に分泌されるホルモンで、骨や筋肉をはじめ、全身の組織の成長を促します。
思春期を過ぎると性ホルモンの分泌量が増え、成長ホルモンの分泌は抑えられますが、しかし成長期を過ぎても皮膚や髪の成長、内臓や血管の修復など細胞の自己修復に欠かせないホルモンとして重要な役割を果たしています。
近年では、この成長ホルモンを上手に補えばいつまでも若さが保てるのではないかと考えられ、欧米や日本でさまざまな研究が進んでいます。
その結果、成長ホルモン自体に若返り効果があること、さらに若返り効果があるとされる各種ホルモンが活発に働く作用を助けることが明らかになってきました。
つまり成長ホルモンの分泌を増やせば老化を遅らせたり、若返ることが可能だということになります。
成長ホルモンの分泌を促すには、成長ホルモンの材料となるアミノ酸、たとえばアルギニン、オルニチン、メチオニン、グルタミンなどを多く含む食品や栄養補助食品を取ることが重要で、それと並行して運動が大切だということも明らかになってきました。
注目すべきは、運動については従来考えられていたよりも、もっと簡単な方法で成長ホルモンを増やせることが明らかになったことです。
筋肉に負荷をかけて行う、「やや強度の高い筋肉運動」によって成長ホルモンの分泌量が増やせるというのです。具体的には1分間の脈拍が150以上になるような運動です。
なぜ、「やや強めの筋肉運動」が成長ホルモンの分泌を促すのでしょうか。
成長ホルモンの分泌を司っているのは脳の中心部にある視床下部です。視床下部から下垂体前葉に身体の各器官に必要なホルモンを分泌するよう命令が出されるのです。
一方、視床下部は自律神経とも深く関わっています。
自律神経は内臓や血管などの働きを支配する神経で環境や身体の状態の変化に応じて、体内の調整をする働きをしています。人間の身体は常に一定の状態に維持されるよう「ホメオスターシス(恒常性の維持)」という働きがあり、自律神経はこのホメオスターシスに深く関わっています。
運動をして体温の上昇が起こったり、脈や呼吸が速くなったり、発汗が促されるなどの変化が起こってホメオスターシスに乱れが起こると、その乱れは自律神経を介し視床下部に伝えられます。視床下部から下垂体前葉に働きかけがなされると、ホメオスターシスの乱れを治すよう指令が出るのですが、その際に、なんと成長ホルモンの分泌が行われることが明らかになったのです。
つまり成長期はとっくに過ぎた中高年の人でも、やや強めの筋肉運動を行うことで成長ホルモンの分泌が促され、老化の速度が遅くなり、若返りの効果が生じるのです。
そこで手軽にできる「若返り運動」をご紹介しましょう。それは、膝を腰骨の高さまで上げる「太もも上げ」運動。これを1日30秒行うだけでいいのです。
※本連載は『太ももを強くすると「太らない」「超健康」になる』(宮崎義憲 著)からの抜粋です。
(東京学芸大学名誉教授・医学博士 宮崎義憲)