キーン、ザーッ、シュー…。
人によって感じ方は異なりますが、実際には周りで鳴っていない音が聞こえる状態を「耳鳴り」といいます。
多くの耳鳴りは、症状の一種であり、それ自体が病気ではありません。しかし、耳鳴りで悩んでいる人は多く、その数はわが国だけで600万人以上に上るといわれています。
今回は「聞こえ」に関するトラブルの一つである耳鳴りの実態やメカニズムについて考えてみましょう。
10~20%の人が経験している耳鳴り
短時間の間であれば「キーン」とか「シーン」といった耳鳴りを経験した人は多いことと思います。しかし、程度は人それぞれ。さほど苦痛に思わない人もいれば、日常生活に支障をきたすほどひどい状況の人もいます。
複数の調査結果によると、10~20%の人がなんらかの耳鳴りを経験しています。もちろん、耳鳴りのある人すべてが苦しみ、悩んでいるわけではありません、しかし、5%の人は持続的な苦痛を感じているといわれています。
耳鳴りの問題点は「その音を自分ではコントロールできない」ことです。そのため、不快な音から逃げられないと感じてしまい不安になってしまいます。さらに耳鳴りは自分にしか聞こえないため人にはそのつらさが分かってもらえないので、余計に悩んでしまうのです。
耳鳴りは必ずしも耳で鳴っていない
実際の診療で患者さんに聞いてみると、耳の奥で鳴ることは案外少なく、耳の周囲、特に耳の後上部の頭の付近で鳴ると訴える人が多いようです。
頭の中で聞こえる耳鳴りを「頭鳴り」と呼ぶこともあります。一般的に両耳の聴力が悪い人では頭鳴りになりやすいといわれています。ヘッドホンで音を聞くと頭の中で音がするように感じられるのと同じ理屈と思われます。
参考までに、耳鳴りのある人に対して行われた米国の調査では、両耳で感じる人が55%、頭の中で感じる人が24%でした。
同調査は耳鳴りの種類について、1種類という回答が54%、2種類が26%、3種類が9%、4種類が6%――と報告しています。
脳がラジオなら、耳はアンテナ
実際には音源が無いはずの耳鳴りの音がどこで発生しているかについては、いまだに議論が分かれています。最近では、耳から脳に正しく音の信号が伝わらず、その結果、脳がそれをおかしいと判断して新たに経路をつくろうとすることが深く関係しているという考え方が主流です。
そのメカニズムを、ラジオが聞こえるしくみで説明しましょう。ラジオには電波を受けるアンテナがあります。アンテナが正常に働いていると放送が聞こえます。しかし、アンテナが折れてしまうと、スピーカーからはザーザーという雑音しか聞こえません。
ラジオ本体は脳、アンテナは耳に置き換えられます。耳の不具合によって信号が届きにくくなるため、脳が自分で音を作り出してしまう状態が耳鳴りと考えることができます。つまり、脳に耳鳴りの回路ができてしまうのです。
聞こえ方や難聴の有無などで分類
耳鳴りは聞こえ方や難聴の有無などで分類することができます。本人にしか聞こえない「自覚的耳鳴り」と、血流などのように本人以外にも高性能マイクロホンを使ったりすると聞こえる「他覚的耳鳴り」とがあります。
言い換えれば、他覚的耳鳴りでは実際に音が発生しているのに対して、自覚的耳鳴りでは音を感じてはいるものの、その音は実存していないものといえます。ほとんどの耳鳴りは自覚的耳鳴りです。
もうひとつの分類として難聴の有無をよりどころにしたのが、難聴を伴う「難聴性耳鳴り」と、難聴が無いのに聞こえる「無難聴性耳鳴り」です。耳鳴りの症状を訴える約10%の人は、聴力検査で難聴が認められません。
http://allabout.co.jp/gm/gc/389442/










