メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の改善のアプローチとして、マカダミアナッツオイルを使ったボディーマッサージに効果があることが、医学的に証明されてきている。有効成分が皮膚から浸透し、動脈硬化や血糖値を改善するとのデータもある。医薬品だけに頼らない統合医療の新たな分野となる可能性を持っている。(山本雅人)
◆血糖値が低下
研究を行っているのは、大阪大大学院医学系研究科の前田和久准教授のグループ。マカダミアナッツに着目したのは「パルミトレイン酸という不飽和脂肪酸が他のナッツに比べ、大量に含まれている」からだ。前田氏のグループは、メタボの典型的な症状で、糖尿病にも大きく関係するインスリンの作用不全の改善にパルミトレイン酸が寄与することを突き止め、平成20年に発表した。
パルミトレイン酸のこのような性質を実証しようと前田氏らは、健常な成人男女8人を対象に臨床研究を実施。マカダミアナッツオイル10ミリリットル(大さじ2/3杯程度)を使ったボディーマッサージを20分間行い、その後の血中のパルミトレイン酸の濃度を調べた。その結果、1時間後の血中濃度が30~40%増加し、早期の動脈硬化を見る指標の数値も施術前に比べ、14%改善した。
一方で、別の14人を対象に、マカダミアナッツオイルとパルミトレイン酸の含まれていないココナツオイルの2つのグループに分け、さらにグループ内で日を別にしてオイルマッサージの施術を受けた後と受けない状態とで、糖尿病検査で使うブドウ糖水溶液を飲んでもらい、血糖値を測定。すると、マカダミアナッツオイルの施術を受けた場合だけが他に比べ、血糖値が有意に低下した。これは「皮膚からパルミトレイン酸が血中に吸収された」(前田氏)ことを示したものだ。
◆癒やしの効果も
臨床研究は昨年、京都で開かれた国際アロマセラピー会議で発表され、「香り」による効果が中心だったアロマセラピーの世界に「栄養」の概念も加えるものとして反響を呼んだ。
ナッツを食べた方が早いのではないか、との考え方もあるが、前田氏は「皮膚からの方が吸収が良く、施術と同等の効果を得るには大量に食べなければならず、続かない」と話す。
オイルマッサージはマカダミアナッツを含め、一般的にはアロマセラピーのサロンなどで受けられる。自分でマッサージを行う場合、前田氏は「このオイルだけでは独特の香りがあるので、精油としてペパーミントなどを加えることで使いやすくなり、癒やしの効果も高まる」。ただ、「品質の良いものを購入し、少量使用して、かゆみなどのアレルギーがないか確認してほしい」と注意点を挙げる。
前田氏は「アロマセラピー研究では日本は世界をリードしており、メタボや糖尿病の改善にも期待できる。他の研究者の成果とともに日本発の統合医療として育てていければ」と期待している。
■介護のデイサービスでも普及
アロマセラピーの使われるシーンは広がりを見せている。
国際アロマセラピスト連盟の認定資格を持ち、東京・恵比寿にある英国のセラピースクールの日本校「L.C.I.C.I. JAPAN」の代表、宮崎陽子さんによると、最近は介護のデイサービスでも普及している。例えば、午前はすっきりの香り、午後はゆったりの香りのアロマをたき、利用者に癒やし効果をもたらしている。
歯科医院でもアロマを取り入れている所が増えている。宮崎さんは「歯科医院では患者さんが過度の緊張を強いられることが多く、アロマの香りでリラックスできるから」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20131214500.html