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福島・富岡町→柏崎 避難の地で居酒屋1年

柏崎市の住宅街にある居酒屋「あじ咲(さく)」が10日で開店から1年を迎えた。福島県富岡町で居酒屋を営んでいた関口幸雄さん(67)が、東日本大震災で被災し、柏崎で避難生活を送るうちに同じ看板で開いた店だ。関口さんは「お客さんの温かい気持ちで1年を無事に過ごすことができた。これからも足を運んでほしい」と話している。(石橋正洋)

富岡町にあった居酒屋「あじ咲」は2011年3月11日、津波で押し寄せたがれきが店の中まで入り込み、大きな被害を受けた。関口さんは「内装がえぐり取られたような感じで、再オープンは考えられなかった」と振り返る。

震災後、関口さんは仕事で縁があった柏崎に避難した。かつての常連客からの励ましもあって、同名の居酒屋のオープンにこぎ着けたのは、昨年12月のこと。のれんや置物、お祝いの花などをもらい、「本当に心強かった」。

苦労したのは、新鮮な食材の仕入れだ。つてを頼りに宮城県・塩釜産の生マグロを仕入れ、柏崎市で安定して仕入れられる食材を考慮してマグロやタイ、カンパチなどを使った三色丼を考案。忙しさでおろそかになりがちだった接客も充実し、客足も徐々に増えている。

柏崎市内に避難する避難者の数は今年9月、震災後初めて1000人を下回った。関口さんは「最近は福島に帰る避難者の送別会で利用されることもある」と話す。その一方で、常連客が増え、柏崎市の従業員に囲まれる日々が続く。今は仮住まいだが、関口さんは「自分もこちらに住むことになるのかな」と語る。

10日は開店1年に合わせ、訪れた客にお菓子をサービスした。関口さんは「『いつも来ています』なんて言葉をかけてもらった。うれしいですね」と喜ぶ。

店名の「あじ咲」には、「優しい『味』に触れて、心に花を咲かせてほしい」という思いが込められている。震災を機に、その気持ちはより強くなった。福島の「あじ咲」は、新潟の「あじ咲」となって定着しつつある。

(2013年12月14日  読売新聞)
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