糖質(炭水化物)は日常生活のエネルギーの源だ。しかし、その中で清涼飲料水や菓子などに多く含まれる果糖(フルクトース)の過剰摂取が肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)をはじめ、脂肪肝など生活習慣病につながることが分かってきた。大量に消費する米国では既に大きな問題になっており、日本でも研究結果を基に専門家が注意を呼び掛けている。(坂口至徳)
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◆抑制の仕組みなし
砂糖は食べると、腸など消化管の中で果糖とブドウ糖という2種類の単糖に分解され、それぞれ別のルートで消化される。ブドウ糖は血液中に出て、全身の細胞をめぐってエネルギー生産に使われる。一方、果糖は肝臓だけで代謝される。そのため、果糖は血糖値を上げず、さらに甘味は強く、ブドウ糖より低カロリーという特性もあり、体に良いというイメージが浸透していた。
ただ、ブドウ糖は血糖値を上げてしまうものの、脳の満腹中枢に働いて食べ過ぎを防ぐという面もある。ところが、果糖には食欲の抑制の仕組みがない。このため、「肝臓で余った果糖は脂肪になって蓄積し、脂肪肝などにつながる」といった指摘は従来あった。
その不安が顕著になったのは、果糖を多く含み、清涼飲料水などに多く使われる高果糖コーンシロップ(高果糖ブドウ糖液糖)との関連が示されてからだ。高果糖コーンシロップは、トウモロコシのデンプンに含まれるブドウ糖を酵素によって果糖に変えて含量を増やして異性化糖にし、甘味を強めることができる。安価で大量生産ができることから、1970年代、キューバ危機で砂糖不足になった米国を中心に需要が拡大した。
だが、並行して肥満が増えていったため、米国では研究も進んだ。「高果糖シロップを与えたラットは、高脂肪食を与えるよりも体重が増え、中性脂肪も多くメタボになった」(プリンストン大学)、「成人の脳機能を画像診断で調べたところ、ブドウ糖の摂取後、15分以内に食欲が減少したが、果糖では減少しなかった」(エール大学)など、果糖の取り過ぎが生活習慣病につながるという推論を裏付ける結果が出てきた。
日本肥満学会の徳永勝人評議員は「果物には繊維や他の栄養素も含まれるので果糖の吸収は緩和される。高果糖シロップのように果糖を直接取り込むと、肥満や糖・脂質・尿酸の代謝異常、高血圧とメタボの症状になりやすい」と指摘する。
◆食品の成分に注意
日本人による研究も盛んになってきた。京都大大学院医学研究科の仲川孝彦・特定准教授らはスペインの大学との共同研究で、成人男性に1日200グラムの果糖を2週間摂取してもらったところ、血圧上昇や中性脂肪の増加をはじめ、糖尿病につながる血糖値を下げるインスリンの効き目が悪くなる(インスリン抵抗性)といったメタボの兆候が表れた。
また、ラットに果糖を多く含む食事を10週間与えたところ、対照群に比べて高血圧や脂質異常、高尿酸血症が多かった。別のラットの実験でも果糖の摂取はブドウ糖よりメタボへの影響は大きく、腎障害にも関係していた。
仲川特定准教授は「果物ではなく、特に高果糖シロップの異性化糖の場合は大量に摂取してしまう可能性があり、注意して避けることが望ましい」と呼び掛ける。
日本では年々、砂糖に比べ、異性化糖の需要量は増加傾向にある。清涼飲料水や菓子類、調味料など幅広く加工食品に使われているためだ。ただし、イギリス、フランス、イタリアなど欧州では異性化糖はほとんど使われていない。食品の成分によく注意し、まずは取り過ぎを控えることが大切だろう。
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■米国の高果糖コーンシロップ
トウモロコシの生産量が多い米国では高果糖コーンシロップが大量に生産されている。清涼飲料水や菓子類、パン、ヨーグルトなどさまざまな食品に幅広く使われている。しかし、清涼飲料水を水代わりに多量に飲む小児らが、砂糖や果糖の影響から過度の肥満になっているとされ、米飲料協会は2008年から公立小中学校での販売を停止している。ニューヨーク市では清涼飲料水などの473ミリリットル以上の大量容器の販売を禁止する予定だったが、同協会が提訴し、無効との判決が出たため、市側が控訴するなど行政も対策に乗り出している。
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