インターネットバンキングの不正送金事件で、「お金を海外口座に振り込むだけで手数料を支払う」という求人メールを不特定多数に送りつけるなどし、違法収益を海外に移動させる手口が今年になって87件も確認されていることが警察当局への取材で分かった。「マネーミュール」と呼ばれるマネーロンダリング(資金洗浄)で、被害額は1億1400万円に上るとみられる。銀行よりも本人確認が甘い海外送金サービス業者を使わせるのが特徴で、捜査関係者は「知らないうちに犯罪に加担させられる」と注意を呼びかけている。
【「私の名前はマーチンと申します」求人メールの画面キャプチャ】
警察当局によると、送金業者を悪用したマネーミュールが国内で初めて確認されたのは今年3月。7月以降目立って増えている。
神奈川県の70代男性は4月上旬、英文のメールを受け取った。「受け取った金を指定口座に振り込めば、振込額の5%が収入になる」。実在する海外の会社名が書かれていたため信用し、ネット上で「雇用契約」を結んだ。間もなく男性の個人口座に約80万円が振り込まれ、指定された送金業者を使って5%を引いた額をロシア人に送ったという。
警視庁によると、英語の求人サイトを見て同様の送金に加担した人もいた。8月からは日本語の求人メールも出回り始め、「正社員として月60万円以上」などの誘い文句が使われている。今年の不正送金被害は約7億6000万円(15日現在)で過去最悪のペースで増加。マネーミュールも被害拡大の一因とみられる。【黒田阿紗子、川辺康広】
◇マネーミュール
ミュールは、雄のロバと雌の馬を掛け合わせた動物「ラバ」の英語名で「犯罪収益の運び屋」を意味する。サイバー犯罪などで得た違法収益を第三者の「運び屋」の口座を経由することで特定を難しくする。ネットバンキングの不正送金事件では立件されたケースはないが、犯罪の認識があれば犯罪収益移転防止法違反に、なくても銀行法違反などにあたるおそれがある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131022-00000011-mai-soci










