脳卒中発症後の後遺症の一つ、手足がつっぱる“けい縮”。治療しないと手足の筋肉が固まり、関節動作が制限、時に痛みが。ボツリヌス療法を中心に、けい縮の治療をご紹介。
1.脳卒中の後遺症
脳卒中では、脳が障害を受けた部位によりさまざまな後遺症が残ります。代表的なのは、体の左右どちらかが麻痺[まひ]する片麻痺や、言語障害などです。片麻痺の起こっている手足には、痙縮[けいしゅく]と呼ばれる手足の”つっぱり”が起こることがあります。これは、筋肉が緊張し過ぎているために、本人の意思とは関係なく動いてしまう状態で、手が開けなくなったり、ひじが曲がったままになったり、足先が曲がってしまうなどの症状がみられます。
片麻痺は、脳から抹消の運動神経への伝達経路が障害を受け、脳からの信号が届かなくなるため現れます。さらに信号が届かない状態が数か月以上続くと、運動神経が勝手に興奮するようになり、痙縮が起こります。痙縮の状態が続くと、筋肉が固まって関節の動きが制限され、痛みが生じることもあります。
2.痙縮の治療
痙縮がある場合、「介護時の負担になる」「痙縮している部位が不衛生になりやすい」「歩行や着替えなど動作が困難」「進行すると激しい痛みが生じる」などさまざまな影響が及び、生活の質が低下することがあります。症状のために困難が生じている場合は、早めに治療を検討しましょう。
治療法は、効果が及ぶ範囲と持続する期間によって大きく4つに分けられます。広範囲で一時的なものに内服薬(筋肉の緊張を緩める薬)、局所的で一時的なものにフェノールブロック(神経細胞を破壊する)・ボツリヌス療法(筋肉の緊張を緩和する)、持続的なものに手術があります。どの治療法でも、筋力増強やストレッチなどのリハビリテーションとあわせて行い、痙縮がある部位の柔軟性を維持することが大切です。
3.ボツリヌス療法
ボツリヌス療法は、ボツリヌス毒素を筋肉に注射して、筋肉の緊張を緩和する治療法です。2010年に痙縮に対する治療において健康保険が適用された比較的新しい治療法で、全身への悪影響はなく安全性が高いとされています。
治療の効果は注射の2~3日後から現れますが、患者さん自身が実感するのは2週間程度たってからが多いようです。また、通常は2~4か月で弱まってくるので、多くの場合再び治療が必要になります。痙縮が生じてから年数が経過している患者さんも、ボツリヌス療法で治療することが可能です。内服薬で十分な効果が得られなかった場合などは、担当医に相談してみるとよいでしょう。
NHK「きょうの健康」2013年9月18日放送分
http://news.goo.ne.jp/article/kenkotoday/life/medical/kenkotoday-20130918-h-001.html