アメリカの神経学者たちのプロジェクトによって、テレビゲームが高齢者の脳を活性化させることが分かりました。新たなビジネスチャンスと言えるかもしれません。
アメリカの実験で、カーレース形式のテレビゲームによって、高齢者の認知能力・記憶力を高められることが『ネイチャー』に発表されました。
この実験は、4年間、30万ドルの予算を費やして行われました。カリフォルニア大学の神経学者、ギャザレー教授を中心とする研究グループは、まず、トレーニング用のテレビゲームを開発します。
「ニューロ・レーサー」(neuro-とは、「神経の」という意味の接頭語)と名付けられたそのゲームは、運転中に次々と現れる道路標識を認識し、車を操作するというもの。ゴールにたどり着く前に誤った操作をすると、ゲームオーバーとなります。
これを20代の人々にやってもらった結果、初回で26%の人がゲームオーバーとなりました。60代と80代の被験者に試してもらったところ、失敗率は64%。しかし、この高齢者たちに半年間練習してもらったところ、20代の人々が初回に行った時とほぼ同じ結果にまで向上しました。
この影響は、ゲームの中だけではありませんでした。ゲームとは別に、認知と記憶力のテストを受けてもらった結果、こちらの成績も向上したというのです。
スキャンによって脳の働きを見てみると、ゲームの最中の高齢者の脳が、若者のそれと同じ反応を示すようになったそうです。一度切れてしまった脳の神経回路が再生することは既に分かっており、今回の結果は、トレーニングによってこの再生が促されたものとみられています。
このメカニズムが明らかになれば、「脳トレ」ゲーム市場の拡大が期待できます。しかし、ギャザレー教授は、研究はまだ始まったばかり、と控えめ。「テレビゲームによるトレーニングが、他の分野でも脳の働きを高めることは大きな発見です。しかし、このゲームの何がこういった影響をもたらしたのかはまだ解明されていません」
興味深い結果が出たものの、他の多くの研究者も慎重な姿勢を崩しません。過去の研究で、若い世代のゲームのしすぎは、日常生活のさまざまな疑問や問題を無視する傾向を生むという結果も出ています(ロチェスター大学)。
ちなみに、現在の「脳トレ」と題されたゲームのほとんどには、期待されるほどの効果が見られないのが実際のところなのだそうです。
いずれにしても、脳神経の再生の方法を探る大きな一歩と言えそう。今後の研究に期待が高まります。
※ 当記事は、ハイブリッド翻訳のワールドジャンパー(http://www.worldjumper.com)の協力により執筆されました。
参考:A Multitasking Video Game Makes Old Brains Act Younger
http://www.nytimes.com/2013/09/05/technology/a-multitasking-video-game-makes-old-brains-act-younger.html?src=me&ref=general
http://news.goo.ne.jp/article/mynaviwomen/life/mynaviwomen-681201.html