夏休みの宿題として多く課される読書感想文。これに苦労する子供は少なくない。本の読み方や書き方にコツはあるが、1冊の本ととことん向き合うことは、その後の人生にとっても貴重な経験になる。(戸谷真美)
◆さまざまな視点で
「ベネッセ教育情報サイト」(http://benesse.jp/)が昨年、小学生の保護者を対象に行った調査によると、夏休みの宿題で子供が「読書感想文」にてこずっていたとした回答は全体の24・4%。「自由研究」(30・1%)に次いで多かった。てこずる原因は、「面白かった」「すごいと思った」という「印象」だけで終わってしまいがちだからだ。
「まず、娯楽のための本と読んで何かを考えるための本は別だ、ということを知る必要がある」と話すのは、財団法人「国語作文教育研究所」所長で教育評論家、宮川俊彦さん。読書感想文は「宿題」にとどまらず、1冊の本をさまざまな角度から読み込み、調べ、それに対する考察をまとめることで「探求心を完結させる体験」(宮川さん)になる。
では、どんな本を選べばいいか。課題図書が選定されていなくても「面白い」ではなく、「意見が言えそう」なものを選ぶ。国語の教科書と同じように、考えて読解するための本だからだ。
読む際には、あらすじを追うのではなく、「何について、どう書かれているか」を意識し、作者や登場人物、自分自身などさまざまな立場に立って読む。物語の成り立ちが理解できたら、作品の時代背景や舞台について、本やインターネットで調べる。取材をしてみるのもいい。
また、作品を自身や家族に照らしてみる▽作者の意図を考える-など、さまざまな読み方をする。こうして作品の本質・テーマに近づく努力をし、子供自身が何らかの「結論」を得ることが大切だ。
そのうえで、構想を考える。「推敲(すいこう)する際、一度消してしまったものを取り返すのは難しいので、一度パソコンに入力してみるのもいい」(宮川さん)
いよいよ原稿用紙に向かったら、「優しいなと思いました」といった印象や感想ではなく、読解の成果である自身の意見や考えたことを書く。印象に残る文章にするためには、タイトルも「○○を読んで」ではなく、自身の考えを表せる言葉を探し、書き出しは音やセリフ、会話などで始めるのもいい。
◆親の体験話す
親はどうサポートすればいいだろうか。宮川さんは「人生に影響を与えた本の話をしてあげてほしい」と話す。自身が体験したことなので、本と人生を結ぶ接点が子供にも分かりやすい。同じように感想文に苦労した経験を話し、とことん読み込むことを勧めたい。
宮川さんは「感想=自分の意見。1冊の本から完結体験を得ることは読書感想文にとどまらず、子供たちが生きるうえで不可欠の自分を把握する力、自分を表現する力につながる」と話している。
【読書感想文のコツ】
(1)意見を持ちやすい本を選ぶ
(2)「何について、どう書かれているか」をつかむ
(3)物語に関係していることを調べる(時代背景、作者、他の作品など)
(4)印象は書かない
(5)タイトル、書き出し、主語を工夫する
(宮川さんへの取材を基に作成)
産経新聞
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/education/snk20130816502.html