[ カテゴリー:社会 ]

安倍首相、消費増税は凍結しましょう

消費税増税は、もう決まりなのか。「当初計画」通り、来年4月から8%になるとの見方が有力だが、消費増税に対し真っ向から反対するのが、コントラリアン(逆張り投資家)の安間 伸氏だ。このほど、『超絶バブルの安全な投資術 バブル期に始める株式投資の勝ち方』(小社刊)を書いた同氏は、前回のコラムでも、「中国バブル崩壊後、大相場がやってくる」で大胆な予測を展開。今回のコラムでは、「財政再建は国際公約」「増税しないと国債が売られる」などといった増税の声に対し、明確に反対。「なぜ、いま消費増税を実施すべきではないのか」を、冷静に説く。
■ 短期の財政均衡では、長期の財政再建を達成できない

【詳細画像または表】

消費税を引き上げるかどうか、決断の時期が近付いている。一部閣僚は「引き上げは既定路線」と言い切っており、市場もそれを織り込み始めている。あとは安倍晋三首相の決断次第ということになろう。

しかし、ここはぜひとも引き上げを凍結、あるいは決断を延期していただきたい。なぜなら消費税引き上げは景気回復に水を差すばかりでなく、長期の財政再建という目的に反してしまうからである。財政再建といえば、通常は「支出カット+収入増」が王道である。個人や企業の場合はそれで問題ない。国(政府)の借金が経済規模に対して小さい場合もそうだ。一般的には財政均衡への努力が、そのまま財政再建となると言って差し支えない。

しかし、国の大きな借金となると、話は違ってくる。というのも政府の大きな支出カットや増税は、次の年の収入減となって跳ね返ってくるからである。つまり財政均衡への努力が将来の税収減につながってしまうという再帰性が、「短期の財政均衡」では「長期の財政再建」が達成できない、という矛盾を生み出すのだ。

日本政府の国債発行残高は現在約850兆円。そして昨年の政府支出約90兆円に対し、税収は年間45兆円程度である。今日から政府支出をゼロにして税収をすべて返済に充てても、国債の元本を返すだけで20年弱かかる計算だ。しかしそんな政策はありえない。なぜなら政府支出をゼロにしてしまえば、来年の税収は45兆円を大幅に割り込んでしまうからである。

■ 「アメリカ方式」を参考にせよ! 

では90兆円の支出を45兆円に減らして、「財政均衡」を目指せば良いのか?  あるいは増税をして45兆円の税収を90兆円に引き上げたら良いのか? それでも似たようなことが起こるだろう。倒産や失業が増え、デフレが深刻化し、また税収が落ち込む。そして「財政均衡」を目指してさらなる増税―――過去20年間さんざん目にしてきた負のスパイラルである。

もはや「支出カット+増税」で日本の政府債務を返そうとしても無理なのだ。それを実現しようとすれば失業や倒産が増えるのはわかりきっている。短期の「財政均衡」を目指すことは、長期の「財政再建」にとって逆効果というわけだ。

では発想を変えて、借金を減らすことをやめてしまおう。そう書くと語弊があるが、「名目GDPを成長させて、利払いや借り換えに問題ないレベルにまで政府債務比率を下げてしまおう」というのが、残された唯一の解決策である。

幸いなことに、アメリカ政府というお手本がある。

1990年代の前半、アメリカ政府は財政破綻の淵にあると言われていた。しかし当時、実は日本もアメリカも財政赤字/名目GDP比率は70%程度であった。いまや日本のそれは200%を大きく超えているのに対し、アメリカは100%を超えた程度である。

ここで大事なのは、「アメリカ政府は借金を返したわけではない」ということだ。この30年、アメリカの政府支出は減ってない。累積債務は今でも増え続けている。しかし同時に経済成長もしているので、借り換えや利払いに懸念はない。日本が目指すべき「財政再建」の方法はこれしかないと考える。

■ 異次元緩和は財政再建への第一歩

ではどうやって、名目GDPを成長させるのか? 

実はインフレを2%程度に保つことが大きなひとつのカギであり、いま日銀が取り組んでいる異次元緩和は「長期の財政再建」にもつながる第一歩なのだ。年間2%程度のインフレは、経済の良薬だ。

それは実質的な「貯蓄税」であり、眠っている預貯金を消費や投資に駆り立てる。デフレで凍りついた経済を円滑に回す原動力となる。資産価格を上昇させ、税収を増やす。過去の借金を目減りさせ、返済を楽にする。ビジネスを育てて経済を立て直すための「必要環境」と言えるだろう。

2%程度のインフレは資金の貸し手にとっても利益となる。デフレが続くと借り手が倒産し、貸し倒れで元本ごと失う可能性が高くなるからだ。それよりも2%程度のインフレを容認して返済の可能性を高め、自分は3~5%程度の金利をもらう方が良いだろう。

インフレ率が2%になれば通常の金融政策も効くようになり、デフレの罠から脱却して経済が正常化するはずだ。借り手にも、貸し手にも、政策決定者にも嬉しい環境。それが「インフレ2%の世界」である。(インフレ政策のメリットについては、拙著「超絶バブルの安全な投資術-バブル期に始める株式投資の勝ち方」第二章「インフレ政策7つのメリット」を参照のこと)

このままでは日本経済が政府債務に押し潰されることははっきりしている。それに対して「支出カット+増税」を行ったのでは、死期を早めてしまうことになりかねない。

それに対して異次元緩和は、名目GDPの成長を手助けすることになり、長期の財政再建に向けた強力な援軍となるだろう。2%程度の安定したインフレ環境であれば企業収益が増え、資産価値が増え、取引も活発になる。法人税も所得税も住民税も取引税も相続税も増えるだろう。デフレにするから税収が減って安定しなくなるのである。適度なインフレを続けることができれば、消費税アップは必要ないはずだ。

■ 消費増税=「超絶デフレ政策」なら、アベノミクスは台無し

しかしここで「消費税引き上げ」という超絶デフレ政策をやってしまったら、異次元緩和も国土強靭化も、台無しである。

消費税は一見、安定した税収をもたらすように見える。しかし消費や投資にブレーキをかけ、企業収益を減らし、資産価値(株価や不動産価格)を下げ、所得税から相続税まであらゆる税収を落ち込ませてしまう「マイナスの切り札」である。
日本の「失われた20年」は奇しくも消費税の歴史と軌を一にしている。

欧州経済が日米に比べていまひとつダイナミズムに欠けるのは、付加価値税が高いことも影響しているのではないか。消費税引き上げは短期的な安定税収を得る代わりに、最も大事な経済成長や将来の税収を犠牲にしてしまうと私は考える。

異次元緩和はいつか終わる。しかし引き上げられた消費税は、二度と引き下げられることはない。直前に駆け込み需要は増えるだろうが、人々はその後また生活防衛のために貯蓄に励むはずだ。

そのときになって「なぜ異次元緩和や国土強靭化政策の効果が出ないのか」「なぜ消費や投資が増えないのか」と聞かれても困ってしまう。自分でブレーキを思い切り踏んでいるのだから、それ以外にどんな政策をしても前に進まないのは当たり前である。

そもそも異次元緩和は「通貨価値を下げ、資産価値を上げる」政策だ。それで真っ先に利益を得るのは企業と投資家であり、生活者への恩恵はどうしても後回しになる。それなのに、生活者から取る消費税を早々と上げてしまうのは、政策の整合性・公平性の観点から言っても容認できるものではない。

まとめに入ろう。

◎政府債務を無理に返そうとするな。その代わり名目GDPを成長させ、政府債務を問題のない比率にまで下げるほうが望ましい。

◎名目GDP成長のため「通貨価値を下げ、資産価値を上げる」政策は有効である。インフレ2%を目指す異次元緩和は、長期的な財政再建への第一歩となる。

◎消費税引き上げは、将来の経済成長と税収を犠牲にする超絶デフレ政策である。短期的な「財政均衡」には役立つかもしれないが、長期的な「財政再建」に対しては大きなマイナスとなる。

◎したがって今回は消費税アップを見送るのが正解

こういった主張は、あまり受けがよろしくないようだ。しかし投資業界の人間としては、それが現実の経済活動に根差した、合理的な方法だと思う。実際にアメリカはその政策で雇用を回復させ、世界に先駆けて量的緩和をやめようとしている。そして何より、もう他に道はないではないか。

もちろん景気回復や財政再建の責任を、日本銀行や省庁に背負わせようとは思わない。政治家が決断し、その責任でやるべきである。
安倍首相には是非、異次元緩和や国土強靭化を支持して、安倍自民党に投票した人々も多かったことを思い出していただきたい。消費税引き上げはその支援者を失望させ、他の政策の効果まで打ち消してしまう強烈なマイナスの切り札となってしまう。せっかく積み上げた経済政策の成功を、それで台無しになってしまうのは大変もったいない。

「短期的な財政均衡」に目を奪われて「長期的な財政再建」という目標を見失ってしまわぬよう、消費税引き上げの凍結を強く進言したい。

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130815-00017632-toyo-bus_all

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130815-00017632-toyo-bus_all&p=2

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130815-00017632-toyo-bus_all&p=3

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