全国有数の豪雪地帯である新潟には昔から冬に積もった大量の雪を利用した天然の冷蔵庫「雪室(ゆきむろ)」が各地にある。この雪室で貯蔵した野菜やお酒などは鮮度が長く保たれ、美味しくなるという。夏季限定でオープンしている雪室コンビニと、日本酒「八海山」で有名な八海醸造の雪室を訪ね、さまざまな「雪室グルメ」を堪能した。
■ニンジンやジャガイモが甘い!
冬はスキー客でにぎわう上越市のキューピッドバレイには1500トンの雪を集めた雪室による大規模な冷房施設がある。1500トンの雪といっても豪雪地帯にとっては「ほんの一部」だそうだ。使う電力は雪室の冷たい空気を送風する分だけ。震災後、節電のために考えられた施設だ。
その一角に、新潟のゆるキャラで店長のレルヒさんが目印の雪室コンビニ「レルひや」が夏季限定でオープンしている。大きいかまくらのような店内は気温が3~5度に保たれ、ひんやりとした涼しさと夏に見る雪が癒やしをくれる。地元産の野菜や果物、米やジュースが並んでおり、さっそく「雪室にんじん」を試食させてもらった。生のままでフルーツのように甘くて美味しい。なぜなのか?
雪室利用を推奨する雪だるま財団の伊藤親臣博士によると、雪室内は温度0度、湿度100%のまま温湿度の変化がなく、冷蔵庫より低くて冷凍庫よりは高い。凍らないギリギリの状態のため、野菜が凍結を防止するためにデンプンを糖化させる「低温糖化」という効果が起き、特にデンプン質の多いジャガイモ、ニンジン、ごぼうなどの糖度が上がり、甘みが増して美味しくなるという。
また、雪室では冷蔵庫のような機械の振動がなく、暗闇状態で紫外線の影響も受けないため、食品のストレスが少なく鮮度が保たれる。この雪室でじっくり熟成されたコシヒカリなどの米、日本酒、味噌なども風味豊かでまろやかな味わいになり、「雪室ブランド」として売り出し中だ。
■銘酒「八海山」と楽しむ雪室グルメ
米どころ・魚沼市の老舗、八海醸造も雪室に注目し、7月にカフェなどを併設した「八海山雪室」をオープンさせた。大規模な雪室施設で、日本酒の巨大なタンクの横には雪が1000トンほど積まれ、低温でゆっくりと熟成される。
タンク室から出ると、ずらりと真新しい樽が並ぶ。日本酒だけでなく焼酎も貯蔵しており、個人で年数を指定して焼酎を預けられる「メモリアル焼酎」のサービスも始めるという。
ショップも併設されており、日本酒だけでなくにいがた和牛やコーヒーなども販売。魚沼の食を紹介するユキナカキッチンではこの日、地産の野菜を使った伝統惣菜「きりざい」を振る舞っていた。“雪の魅力”をたっぷり味わえ、モダンな建築の「八海山雪室」は、これから人気を呼びそうな施設だ。
◆雪室コンビニ・キューピッドバレイ
新潟県上越市安塚区須川 雪だるま高原、北越急行ほくほく線・虫川大杉駅からシャトルバスで20分。雪室コンビニは8月26日(日)まで営業。
◆八海山雪室
新潟県南魚沼市長森459、JR浦佐駅から車で15分「魚沼の里」内。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20130810534.html