側溝転落・坂での横転事故も
ハンドル形電動車いすは操作が簡単。歩行が不自由になってきた高齢者には便利だ。ただ、普及するにつれて、事故も相次いで起きている。安全には十分注意したい。
東京都武蔵野市の石沢良男さん(67)は5年ほど前、足の病気になり歩くのが難しくなった。通院や買い物にはハンドル形電動車いすで出かける。「生活に欠かせません」と話す。
ハンドル形電動車いすは手動の車いすとは異なり、足腰の弱った高齢者でも1人で遠くまで外出できる。いすに座ってハンドルやレバーを操作。時速6キロまで出て、前進だけでなく後退もできる。道路交通法上、電動車いすは歩行者と同じ扱いなので免許は不要。基本的には歩道を走行する。
購入すると1台20万~40万円かかるが、介護サービスで借りることができる。メーカーなどでつくる電動車いす安全普及協会(浜松市)によると、ハンドル形電動車いすは2011年度1万3670台が出荷された。累計出荷台数は44万7310台に上る。
広く利用されるようになるにつれ、事故も相次いで起きている。今年4月には、大阪府高石市内の踏切で、ハンドル形電動車いすの男性(75)が、電車にはねられ死亡した。消費者庁によると、電動車いすの重大製品事故は、07年度から今年6月末までに計74件発生した。そのうち39人が死亡し、28人が重傷を負った。
川や側溝に転落したり、下り坂で横転したり、操作ミスによる事故も目立つ。同庁では、「道路の端には寄りすぎないようにし、急な坂道の通行は避けてほしい」と呼びかける=別表=。
一方、歩道を走行中に人やベビーカーにぶつかるなど、ハンドル形電動車いすの利用者が加害者になる事故も起きている。福祉用具の情報提供を行うテクノエイド協会(東京)の五島清国さんは、「加齢によってとっさの判断力などが衰えることもある。操作能力が低下していないか、家族などの周囲が注意して見守ることも大切です」とする。
自治体やメーカーなどによる安全運転講習会も、各地で行われている。日本電動車いす交通協会代表理事の利光国高さんは、「初めてハンドル形電動車いすを利用する人はもちろん、使い慣れている人も、運転技術や交通マナーを再確認するためにも、こうした講習会を積極的に活用してほしい」と話している。
電動車いすの安全運転のポイント
【運転前】
・バッテリーの残量を確認する。
・操作レバーなどが正常に作動するか確認。
【道路】
・転落、転倒を防ぐため、道路の端に寄りすぎない。
・水田や川の土手など転落の危険のある場所には近寄らない。
・砂利道など舗装されていない道路や、落ち葉などで滑りやすい場所では乗らない。
【坂道や段差】
・転倒を防ぐため、急な坂道では乗らない。
・大きな段差を乗り越えようとしない。
【踏切】
・車輪がレールの溝にはまらないよう、レールに対して直角に横断する。
・脱輪しないよう、渡るときには踏切の端に寄りすぎない。
(消費者庁などへの取材をもとに作成)
(2013年7月19日 読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=81547