◆5年ぶり災害派遣、なぜ除雪が大変に?
◇背景に担い手不足 過疎化、高齢化、建設業界の縮小
知っトキ 今冬の大雪で県が5年ぶりに陸上自衛隊へ災害派遣を要請し、魚沼市で除雪作業が行われたけど、なぜ除雪がそんなに大変になっているの?
記者 今冬は魚沼市の入広瀬で1月31日に積雪が4メートルを超えるなど、積雪が多いのは確かです。しかしそれだけでなく、地域が抱えるさまざまな問題が表面化し、雪対策を厳しくしています。
Q 例えば?
A 豪雪地を中心に過疎化が進み、雪おろしをしてくれる若い人が少なくなっています。10年10月1日現在の国勢調査(速報)によると、本県の人口は237万4922人で5年前より5万6537人(2・3%)も減りました。2・3%という減少率は1920(大正9)年の調査開始以来、最大です。減少率が大きい市町村をみると、粟島浦村16・6%▽阿賀町9・5%▽関川村8・2%▽出雲崎町8・1%▽魚沼市7・3%▽佐渡市と津南町が6・9%と、豪雪地が目立ちます。
一方、65歳以上の高齢者が県人口に占める割合は10年が26%で、00年の21%から5ポイント上がりました。若い人が都会に出て子育て世代が減り、高齢化が進んでいます。泉田裕彦知事も「今までのような『おじいちゃん、おばあちゃんは家にいて。雪下ろしはやってあげるから』と言ってくれる世代が地域から失われている」と危惧しています。
Q 若い人が減っても、建設業者に除雪を頼れないの?
A 県内の建設会社やそこで働く従業員の数も減っています。国土交通省の統計によると、県内の07年度の建設投資額は1兆2788億円でしたが、ピークだった96年度の2兆2785億円の約半分に下がっています。建設業許可業者の数も、07年度は1万1214社で、ピークの99年度の1万2619社から11%減です。長引く不況とともに、政府が財政再建のために公共投資抑制を進めたことも背景にあります。民主党政権も「コンクリートから人へ」と公共事業削減を掲げ、この傾向は続きそうです。
Q 本県では04年の中越地震や新潟豪雨、07年の中越沖地震が起き、その後、復旧工事が行われたけど、建設業の仕事は増えなかったの?
A 復旧事業によって県内で建設の仕事が増え、業者の収益も一時持ち直しましたが、長くは続きませんでした。復旧工事がほぼ終了すると、通常の工事は減り、建設会社の経営環境は厳しくなりました。
Q 建設業界全体の従業員の数はどうなってるの?
A 厚生労働省によると、県内の07年の建設業就業者数は8万4438人で、ピークの97年の11万5977人から約3割も減りました。
Q 人が減ると除雪が大変になるんだね。
A 今冬のように、昨年末から絶え間なく雪が降ると、休む間もなく道路や屋根の除雪が必要になります。業者も、少ない人数で連日フル稼働を強いられています。建設業者も冬の間だけ従業員を増やすわけにもいきません。それで、高齢者が自分で屋根に上がって雪下ろしをせざるをえなくなり、転落など痛ましい事故が相次いでいます。どうすれば地域の疲弊を防ぎ、雪対策を改善できるか、行政が中心に考えていく必要があります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110207-00000102-mailo-l15