遺伝子組み換え大豆の新たな国内承認に不安の声――。農林水産省は、遺伝子組み換え操作で特定の除草剤への耐性を得た大豆2品種の承認に先立ち、昨年末から1月22日まで、国民からの意見募集(パブリックコメント)を行った。これに対してNPOアジア太平洋資料センター(PARC)が「遺伝子組み換え作物が引き起こす問題の周知徹底が必要」と表明。同センターには同日までに、承認反対を求める声を中心に740件の意見が寄せられた。
■農水省審査では「問題なし」
農水省は昨年12月24日、バイエルクロップサイエンス社より承認申請のあった遺伝子組み換え大豆2品種に関して審査報告書を発表した。それによると、除草剤グリホサート及びイソキサフルトール、イミダゾリン系除草剤のそれぞれに耐性のある大豆について、生物多様性の観点から、国内の動植物への影響や有害物質の発生、交雑の可能性を調べた。
その結果、いずれの項目でも有意なデータは得られず、報告書は「今回申請された遺伝子組み換え大豆の栽培による国内の生物多様性への影響のおそれはないものと判断した」と結論付けている。
特定の農薬への耐性を得た遺伝子組み換え大豆の栽培をめぐっては、農薬で枯れた雑草が畑を覆うことで表土の流失が防げ、不耕起栽培を促すとの意見がある。また、大豆の安全性についても、東京都健康安全研究センターのラットへの104週間の投与試験では影響が見られなかったとの調査結果がある。
農水省や遺伝子組み換え食品いらないキャンペーンによれば、現在国内では遺伝子組み換え大豆の栽培農家はない。ただし現時点で大豆だけで12品種が栽培承認、7品種が食品承認されている。
■農薬耐性雑草出現など、様々な問題が
しかしその一方で根強い懸念や批判も存在する。自然保護団体グリーンピースのレポートでは、遺伝子の組み換えによって未知の毒素や、アレルギーなどを引き起こすタンパク質が産生する恐れがあると主張。また、遺伝子組み換え作物の安全性検査の期間が数日から数週間の短期間で行われていることに加え、遺伝子操作の方法がずさんであったり、データそのものに欠陥があったりする場合があると指摘する。
また、特定の農薬への耐性を得た雑草の出現も大きな問題だ。栽培農家は新たにより強力な農薬を購入し、散布しなければならず、追加の出費を強いられる。遺伝子組み換え作物の栽培が始まることで、遺伝子組み換え作物の畑に隣接する有機農家が有機農家としての資格をはく奪されるという事例も起きているという。
TPP参加と軌を一にするかのようなタイミングでの今回の承認の動きに対して、PARCに寄せられたコメントはそのほとんどが「遺伝子組み換え作物に反対」だ。消費者の不安は根強い。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110128-00000302-alterna-bus_all