最高裁の判決を受け、2月に設置された厚生労働省の検討会。田村憲久厚労相の「5月中に方向性を示す」との方針を受け、3カ月半で11回の会合を開くなど急ピッチで議論を進めたが、ネット販売の全面解禁を求めるネット業界と、薬剤師による対面販売を重視する団体との溝は最後まで埋まらなかった。
検討会は事実上、「オンラインドラッグ協会」(理事長・後藤玄利(げんり)ケンコーコム社長)などのネット販売業界と、日本薬剤師会などの「当事者」同士が持論を戦わせる場となった。厚労省は検討会を「ネットの場合、対面の場合の安全確保策を話し合えた。有意義だった」と評価したが、検討会ではそれぞれが自分の立場から市販薬への考え方を述べる場面が多く、全体の方向性は示せなかった。
“外圧”にも揺れた。政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)は3月、ネットの市販薬販売を全面解禁するよう政府に求める提言をまとめた。
これに対し、自民党の「医薬品のネット販売に関する議員連盟」(会長・尾辻秀久参院議員)は、第1類のネット販売禁止に向け、薬事法改正案を議員立法で提出する方針で一致。メンバーからは批判や不安の声も上がったが、検討会はこうした外部意見をはねのける統一見解を出せなかった。
検討会の取りまとめを受け、厚労省は早急にルールづくりに着手する。稲田朋美行政改革担当相は31日の記者会見で、「ネットだから危険という前提に立った規制はやめてもらいたい」と、厚労省を牽制(けんせい)。後藤社長も、厚労省が薬事法改正でネット販売を禁止した場合は提訴も辞さない構えを見せる。議論は再び法廷に持ち込まれて長期化する恐れもあり、厚労省は難しい判断を迫られている。
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