◇安全、安心を携帯メールで発信
長岡市内で発生した自然災害や交通事故、子どもを狙った不審者、インフルエンザの流行など、地域の安全と安心に関わるさまざまな情報を携帯電話のメールで無料配信するNPO法人「住民安全ネットワークジャパン」(長岡市)のサービスが好評だ。 04年から始めた取り組みで、登録会員数は約1万8000人に上る。 どのような経緯でこのサービスを構築したのか、理事長の高木仁さん(65)に聞いた。【岡村昌彦】
◇子どもを不審者から守る 中越地震では生活情報を発信
--携帯電話のメールで不審者情報などを発信することを思いついたいきさつは?
◆03年に東京であった携帯電話のコンテンツ発表会に行ったのがきっかけ。 携帯電話の画面をバーコード代わりにかざすなど、携帯電話でこんなにいろいろなことができるんだと、目からウロコだった。 そこで、仲間と会社を起こすことにした。 当時、関東地方で、暴力団の抗争に小学生が巻き込まれそうになる事件が起きた。 学校は保護者らに子どもたちを迎えに来るよう連絡しようとしたが、連絡網の不備で子どもらが学校に残されたままになったという出来事があった。 今は共働きの時代なので、携帯電話のメールで情報を発信すればいいのではないか、と思いついた。
--スムーズに進んだのか?
◆会社として学校に営業するより、NPO法人として活動することにした。 不審者情報を発信するのに、民間だけでは信用されないので、県警や長岡市教育委員会に協力を申し入れ、04年7月にNPO法人を発足させた。 その直後に、新潟豪雨(同年7月13日)があり、仲間から集めた情報を基に、被害状況などをメールで配信したら「助かった」との声が寄せられた。 公的機関だけでなく、会員から集めた情報も配信している。
--中越地震(04年10月23日)の際は?
◆自分のことで精いっぱいだったが、知人から「どこで入浴できるかの情報を配信してくれないか」と頼まれた。 ああそうか、と思い、情報を集めて配信したら、今度は洗濯ができる場所やごみ収集日、営業しているガソリンスタンドなど、生活情報を流してほしいとリクエストを受けるようになった。
--交通情報も流している。
◆05年の大雪の際、市内の幹線道路で大渋滞が発生した。 ところが、抜け道を走ると、とてもすいていた。 その情報を配信したら「とても助かった」とメールをもらった。役立っているなと実感した。
--NPO法人を設立し、サービスを始めたのが59歳のとき。 携帯電話でメール配信するなど、IT(情報技術)機器への抵抗感はなかったのか?
◆大学では貿易英語を専攻し、卒業後はいったん東京の商社に就職した。 朝から晩までタイプライターで英語の文書を打っていたことが、今になってよかったと思う。 商社の仕事をしていなかったら、横文字アレルギーになっていただろうし、デジタルの時代にも対応できなかったと思う。
==============
■人物略歴
◇たかぎ・ひとし
1945年、長岡市生まれ。明大商学部卒業。長岡市の石油・ガス器具販売「高木商会」社長。羽田空港でポーターのアルバイトをしていた大学時代、66年にビートルズが来日した際には、ジョン・レノンらメンバー4人が飛行機から降りてくるタラップの下にいて、彼らの荷物を運んだ。サービスの登録は、携帯電話のメールで題名を「111」としてjm@jmjp.jpへ送信する。
http://mainichi.jp/area/niigata/news/20110115ddlk15040036000c.html-毎日jp