沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件など不測の事態に対処するために、海上保安庁が「海上警察権」を強化する方針を固めたことが3日、海保関係者への取材で分かった。
不法侵入船を強制的に停船させる権限を増大させるほか、海上自衛隊との連携を強める方向で調整している。 馬淵澄夫国土交通相は領海警備体制について有識者会議を設置し、海上保安庁法の問題点や法改正の可能性を議論。 通常国会への関連改正法案提出も視野に、今月上旬にも方向性を出す方針だ。
海保は不法侵入船に対し、船内検査や抑留、威嚇射撃、拿捕(だほ)などの「海上警察権」を持つ。
現行の海上保安庁法では、巡視船が不法侵入船に体当たりして強制的に停船させる措置が認められている。 しかし、刑事的な法令違反となる「犯罪がまさに行われようとする」「生命、財産に重大な損害が及ぶ恐れがあり、かつ急を要する」場合と限定され、実際に行われた例はない。
海保幹部は「現状では、中国船が領海内に侵入しても刑事的な法令違反には当たらないという判断になり、体当たりによる停船はできない」と打ち明ける。
平成20年末に中国の海洋調査船が尖閣諸島の領海内に約9時間侵入した際も、海保の巡視船は、警告の呼びかけを行うしかなかった。
このため、法改正で体当たり停船の要件に「国益を損なう恐れがある場合」などと付記し、停船させやすくする案が浮上している。
また、海上自衛隊との連携強化も図りたい考えだ。
海上保安庁法では、領海侵犯した船が停船に応じないなど特定の場合、武器使用を認めている。 しかし、強力な重火器を所有している船には海保は対処できない。
対処するために海自を出動させるには「海上警備行動」の発令が必要で、時間がかかる。 自民党などからは「領海警備に自衛隊も当たれるようにすべきだ」との声が上がっていた。
ただ、海自との連携では自衛隊の権限強化につながるという反発が予想されるなど、他官庁との役割分担には課題が多い。 ある政府関係者は「法改正の前に、海自が集めた情報を海保に提供するといった現場レベルの連携強化から始めるべきだ」と指摘している。
海保によると、尖閣諸島沖では昨年、違法操業の外国漁船に出した退去警告件数は約450件で、前年の約3倍にのぼった。 昨年9月には中国漁船衝突事件が発生するなど領海警備の重要性が改めてクローズアップされ、政府内では「海上権益の確保のため、海上保安官の業務を支援する制度づくりが必要だ」(仙谷由人官房長官)との機運が高まっていた。
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