C57が牽引して、新潟駅からJR磐越西線を通って会津若松駅(福島県会津若松市)に向かう快速「SLばんえつ物語」号。15年目となる今年は、パノラマ展望室を備えたグリーン車両が初めて登場して、6日から運行を始めた。SLに引かれた優雅な列車に乗って「日本の原風景」ともいわれる美しい沿線の景色の中を旅してみた。(新潟支局長 慶田久幸)
黒と茶色を基調にしたグリーン車両は、客車7両中7号車に連結。会津に行くときは最後部になる。
専用のパノラマ展望室があるため定員は普通車両の半分以下の30人。座席は背面に木材を使って癒やし効果を引き出すほか、配列を通常の4席から3席に減らし、在来線特急グリーン座席並みの間隔に広げた。
「SLばんえつ物語」号は、細身の優美な車体から「貴婦人」と呼ばれるSL「C57」が牽引(けんいん)する。
このC57-180は昭和21年に誕生。新潟、新津機関区で活躍したあと、44年に引退し、新津第一小学校で保存されていた。平成9年に、「SL C57180号を走らせる会」が発足し、解体修理を経て、11年から「SLばんえつ物語号」として走行している。
午前9時43分、新潟駅を、駅長さんやスタッフに見送られて出発だ。
グリーン車のパノラマ展望室はガラスに囲まれているが、戦前、東海道線を走った「さくら」など特急の最後尾に展望台があり、有力者が手を振って出発していくのを映像で見たことがある。この光景はまさにあんな雰囲気で、ちょっと高揚感。
このパノラマ展望室は新潟への帰りは先頭車両に変わり、SLの迫力を目の前で楽しめる。
ちなみに片道料金は、新潟-会津若松間の普通指定席より1110円高い3830円(大人)になるが、JR東日本では「豪華な雰囲気と快適さを兼ね備えているので十分楽しめる」(関森多市郎新潟支社長)と太鼓判を押す。
最初は新潟近郊の住宅地や田園風景の中を走る。
その間に他の車両へ。
普通車は12形と呼ばれる客車で、赤いモケットのシートなど大正ロマンの雰囲気を醸し出している。
4号車の展望車は、窓が屋根まで広がり、座席が窓側を向いており、大きな車窓風景が楽しめる。ここはだれでも入れるが、あまり長い時間占領しないよう、交代しましょう。
5号車はオコジョルーム。SLばんえつ物語号のマスコットキャラクター・オコジョの「オコジロウ」にちなみ作られた。
長い時間乗車して、飽きてしまう子供らのための遊び場車両で、オコジロウのイラストがあちこちに飾られるほか、靴を脱いでくつろいだり、オコジョの着ぐるみを着たスタッフが紙芝居を読んでくれたりする。
まあ、おじさんはあまり長居しないほうがよさそうだ。
馬下駅を過ぎるころから、阿賀野川が車窓に近づいてくる。
水量豊かな大河と並行して走るSL。トンネルを出たり入ったりしているうちに、窓ガラスが曇ることに気づいた。
はじめは、外が寒いからかと思ったが、曇るのは外側。SLの蒸気がトンネルでこもり、車内との気温差で曇るのだ。こんな中で運転する機関士さんに感謝。
ところで、この沿線には咲花温泉や三川温泉など、あまり知られていないが、いい温泉がたくさんあるそうだ。今度が途中下車していってみたいものだ。
何度か阿賀野川を鉄橋で渡る。そのたびに、多くのマニアがカメラを持って待っている。しっかりポイントはつかんでいるのだ。
「マニアが乗ってくれればいいのに」とつぶやいたら、JR東日本新潟支社の関係者がこう答えてくれた。
「この列車に乗っても、支社の収入はそんなに増えるものではありません。それより沿線にお客さんが少しでも来て、お金を落としてくれるほうがありがたい」。うーん太っ腹。
残念ながら、津川駅で下車することになったが、この先は、NHK大河ドラマ「八重の桜」で脚光を浴びる会津だ。
新潟支社も、「この列車でSLを楽しむとともに、福島の復興にも協力してください」としており、ぜひ乗ってみてください。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/130414/ngt13041418000002-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/region/news/130414/ngt13041418000002-n2.htm