これまで日本では「武器輸出三原則」によって、武器の輸出は禁止が基本だった。また、武器選択の際の重要なポイントである「実戦経験」がないこと、さらに自衛隊のみを対象にしているため割高であることから、武器輸出において日本は国際的競争力に欠けるとされてきた。
しかしながら一方で、ジュネーブ高等国際・開発問題研究所が国連で発表した「2012年版 小型武器概観」では、日本は世界のトップ12ヵ国のひとつとされている。日本側では、スポーツ競技や狩猟のための「火器」であり、厳密には「武器」ではないとしているが、2009年度の輸出額は2億4,900万ドル(約235億円)と安くはない金額になっている。
さらに、最近の武器は共同開発が主流で、日本は技術提供という形で武器輸出に関わっている場合も少なくない。加えて、領土問題をはじめとする国家間の緊張関係が、各国に自国防衛の再考を促している。
こうした背景もあり、日本も武器とは無縁というスタンスはとりにくくなった。2011年には、当時の野田首相が、安全保障面での同盟国との開発や日本の安全保障上に必要と認められれば武器輸出もやむなしと、武器輸出三原則に新たな解釈を加えている。
今年に入り、オーストラリア、インドとの協力や輸出話がいよいよ具体的になってきた。
オーストラリアとは、潜水艦に関する日本の技術が供与される公算が強まった。これは海上自衛隊の「そうりゅう型潜水艦」に採用されている推進装置だ。供与が決まれば、オーストラリア海軍の主力ではあるものの、技術的な問題点も指摘されている6隻のコリンズ型潜水艦に転用・配備することが検討されている。
また、先日インフラ整備に2,900億円の円借款が決まったインドとは、海上自衛隊の救難飛行艇「US-2」売買の交渉が大詰めを迎えた。古くは「二式飛行艇」など、傑作機を多数生み出した新明和工業(本社:兵庫県宝塚市)が手がけるUS-2は、世界で唯一、波の高さが3メートルの荒海にも離着水可能など、優れたスペックを満載する日本自慢の1機で、価格は約100億円。なお今回の輸出の扱いは、武器ではなく一般の航空機となるそうだ。そのため機体も自衛隊仕様から、民生品としての若干の模様替えを行う。
武器の輸出が本格化すれば、日本の防衛産業の技術が低下することなく、また大量生産で価格も大幅に下がり、防衛予算の圧縮にもつながるなど、多方面にメリットがある。その一方で、武器輸出三原則の解釈や周辺国との新たな摩擦になるのではないかと不安視する見方も広がりそうだ。
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