裁判員制度の見直しについて、法務省の有識者検討会が報告書案をまとめた。裁判員の負担軽減などを提言している。
2009年に施行された裁判員法は付則で、必要があれば3年後に見直しを検討すると定めている。報告書案は今後、法改正のたたき台になる。制度の改善に生かしてもらいたい。
報告書案は、性犯罪被害者のプライバシー保護への配慮を裁判所に義務付けることを盛り込んだ。裁判員の選任手続きで、被害者の氏名や住所が裁判員候補者に知られないようにする。
東日本大震災のような大災害が発生した場合、被災地に住む裁判員候補者に対し、裁判所への呼び出し状を送付しない規定が必要だとも指摘している。
こうした改善は、制度の信頼を高める上で妥当と言えよう。
疑問なのは、報告書案が、長期化が見込まれる裁判を裁判員裁判の対象から外し、裁判官だけで審理する仕組みを新たに設けるよう求めている点だ。
審理期間が長くなれば、裁判員の負担が増すのは確かだ。
だが、そもそも裁判員制度は、殺人など社会的影響の大きな事件の裁判に、国民の判断を反映させるという趣旨で導入された。
昨年、さいたま地裁や鳥取地裁では、裁判員の任期が100日と75日に及ぶ裁判が行われた。期間が長かったからこそ、濃密な議論が出来たと、判決後に感想を語った裁判員もいる。
検討会は、除外対象として審理期間が年単位に及ぶケースを想定しているようだ。しかし、国民の関心が高い事件が結果的に除かれることにつながりはしないか。
裁判員の負担軽減に配慮することは大切だが、制度の趣旨を損なっては本末転倒だ。
公判前に争点を絞り込み、審理期間の短縮を図る。裁判員候補者の辞退を柔軟に認める。こうした運用上の工夫を可能な限り重ねることが重要である。
裁判員に課せられる守秘義務の在り方も課題だ。
裁判員法は、判決を決める評議のやりとりを生涯にわたって漏らしてはいけないと定めている。報告書案は、その見直しの必要性を認めなかった。
ただ、いつ裁判員に選ばれるかわからない国民にとって、最も参考になるのは経験者の声だ。
量刑判断など評議の核心部分についての守秘義務は必要だとしても、その範囲や期間を見直す余地はないか、検討すべきだろう。
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/life/medical/20130406-567-OYT1T01069.html