慢性胃炎と診断された人の「ピロリ菌」の除菌治療が2月から医療保険の適用になった。除菌といっても1週間、3種類の薬を飲むだけで、除菌後は胃がんリスクが3分の1に低下。専門家は「これを契機にピロリ菌を除菌し、胃がんを予防して」とアドバイスしている。(清水麻子)
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1週間、薬3種だけ
ピロリ菌の正式名称は、ヘリコバクター・ピロリ菌。人の胃の中に生息する細菌で、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどを引き起こす。
日本人の2人に1人は感染しているとされ、世界でも多い。かつて上下水道が十分に完備されていなかった時代の環境が感染原因とされ、高齢者の感染率は7~8割と高い。
元国立がんセンターの内視鏡部長で「日本橋大三クリニック」(東京都中央区)の斉藤大三院長は「ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜が徐々に荒れ、慢性胃炎や胃潰瘍、胃がんにかかりやすくなる」とし、「多くの人にピロリ菌の有無を調べてもらいたい」とアドバイスする。
斉藤院長によると、ピロリ菌の検査も除菌も簡単だ。息や尿、血液を採取する胃内視鏡を使わない検査法もあり、気軽に検査ができる。除菌法は、2種類の抗生物質と胃酸の分泌を抑える薬の計3種類の薬を1週間飲むだけ。一部の人に下痢などの副作用が伴うこともあるが、大半の人は除菌に成功するという。
ただ、保険で除菌を受けるには胃内視鏡検査が必要だ。「何となく胃腸の調子が悪い」という症状があれば、医療機関を受診し、胃内視鏡検査後に慢性胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍などと診断され、ピロリ菌感染も分かれば除菌は保険適用となる。症状がなくても自治体などの胃がん検診(胃内視鏡検査が必要)で慢性胃炎などが発見されれば、ピロリ菌除菌を保険で受けられる。
ピークは2~5歳
「胃がん検診を待たずに感染の有無を知りたい」という人は自費で調べることもできる。「日本ヘリコバクター学会」(千代田区)では、ピロリ菌の検査や除菌を行う全国の医師を認定医としてホームページ(http://www.jshr.jp/)で公開している。
斉藤院長によると、認定医による自費での検査・治療は各5千~6千円(薬代は別)。結果的に胃内視鏡検査で慢性胃炎などが分かれば保険が適用され、会社員は3割、75歳以上の高齢者は基本的に1割で済む。
高齢者の感染率が高いが、感染のピークは2~5歳。「特に食べ物の口移しで子供への感染が広がる恐れがあるため、子育て中のお母さんは自分の感染を調べてほしい」(斉藤院長)
除菌後はピロリ菌感染はほぼなくなるが、胃がんのリスクがなくなったわけではない。斉藤院長は「除菌成功後も胃内視鏡検査は必ず受けるように」とアドバイスしている。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130327/bdy13032710340000-n1.htm
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