ソーシャルゲームが人気を集めている。グリーやモバゲーなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で提供されているゲームのことで、最近ではスマートフォンでプレイするのが主流になっている。
ソーシャルゲームは、ゲームを有利にすすめたり、コレクションしたりするための「アイテム」の獲得に課金システムを伴うものが主流。この課金アイテムをめぐってのトラブルが起こっている。たとえば、「ゲーム内で知人に貸したアイテムを返してもらえなくなった」「運営会社の手違いでアイテムが消失してしまった」といった相談が、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」にも寄せられている。
現実の世界では、自分の財産がだまし取られたり、他人の過失で失われてしまったりした場合、通常はその賠償を求めるだろう。しかし、ゲーム内のアイテムは、実際に存在する「モノ」ではない。相談に寄せられたようなソーシャルゲーム内のトラブルについて、損害賠償の請求は可能なのだろうか。ゲーム内のアイテムという「無形物」は、果たして財産といえるのか。森本明宏弁護士に聞いた。
●ソーシャルゲームの課金アイテムは民法上の「物」ではない
「民事の損害賠償請求をする場合、まず、自分が所有する『物』を騙し取られたり、消滅させられたりしたことを理由に請求をすることが考えられます。しかし、ここで言う『物』は、民法上、現実空間の一部を占める固体、液体、気体といった『有体物』をいうとされています」
森本弁護士はこのように民法の原則的なルールを述べたうえで、「今回問題となるソーシャルゲームの課金アイテムは、仮想空間内の無形物であり、民法上の『物』にはあたりません」と指摘する。
では、ゲームの課金アイテムが「物」にあたらないとすると、損害賠償請求をする余地が一切なくなってしまうのだろうか。森本弁護士によると、「必ずしもそういうわけではありません」という。
●課金アイテムを「利用する権利」が侵害されれば、損害賠償請求できる
「ソーシャルゲームの課金アイテムを『有償で取得したアイテムを利用する権利』と捉え、財産的価値を有するこのような権利を騙し取られた、あるいは手違いで消失させられたことによって侵害されたと、法的に主張することが可能です。
このような法的な論理構成を取ったうえで、騙し取った相手に対しては不法行為に基づく損害賠償請求、手違いで消失させてしまった運営会社に対しては不法行為あるいは債務不履行に基づく損害賠償請求をすることは可能であると考えます」
つまり、ソーシャルゲーム内の課金アイテムは「物」ではないとしても、それを利用する「権利」が侵害されたとして、損害賠償を請求できるというわけだ。ゲームという架空空間の行為についても、現実世界の法律が適用されるということは知っておいてもよいだろう。
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