5人が死亡した長崎市のグループホーム火災。火元とみられる加湿器は14年前にリコール(回収・無償修理)対象となっていたが、気づかずに使い続けたことが事故につながったとみられる。今回に限らず、リコール後の製品による事故は続発。被害を防ぐためにも消費者自身が身の回りの製品のリコール情報をチェックすることが大切だ。
◆回収は7割
加湿器を製造・販売した電子部品大手「TDK」は、平成11年1月に通商産業省(現経済産業省)にリコールを届け出、全国紙や地方紙への新聞広告やチラシ、自社のホームページで回収情報を発信してきた。ただ、今年2月21日までの回収率は73・6%で、5千台以上が未回収のままだ。
今回の火災事故前に計46件の発火・発煙の報告が同社に寄せられており、「回収情報の周知が不十分だ」との声もある。製品安全に関するリスク・マネジメントに詳しい偏西風(にしかぜ)事務所主幹の久新(きゅうしん)大四郎さんは「7割の回収率は十分でないが、低いわけでもない。地方紙にも回収広告を出しており、周知努力はしていた方だろう」と話す。
重大事故が発生する可能性が高い製品に対し、国は消費生活用製品安全法に基づき、危害防止命令(緊急命令)を出すことができる。しかし、これまで同命令が出されたのはパナソニック(旧松下電器)の石油ヒーター(17年)とパロマ工業(18年)の湯沸かし器の2製品だけ。経済産業省は「発動するかは総合的に判断して決める」とするが、2製品とも事故による死亡が明らかになってからだった。
2製品による死亡事故は大きく報じられ、回収を呼び掛けるテレビCMもたびたび放送されている。しかし、今に至るまでも全てが回収されたわけではない。久新さんによると、リコール品と知りながら「届け出が面倒」「自分の製品では不具合がない」などの理由で使い続ける消費者もいるとみられ、企業だけを責められない面もある。
◆身の回りチェック
16年施行の消費者基本法(旧消費者保護基本法)では「消費者は自ら進んで消費生活に関して必要な情報を収集するなど合理的に行動するよう努めなければならない」などとされている。企業が消費者に分かりやすいようなリコール情報を出すのは当然だが、消費者自身も受け身ではなく、積極的に情報を収集することが求められている。
日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会東日本支部の原郁子(ゆうこ)さんは「まずは身の回りの製品がリコール対象となっていないかチェックしてほしい。電気製品を買ったらメーカーや型番をメモに残し、保証書は期間が過ぎても保管しておいた方がいい。どんなものにもリスクがあることを念頭におき、新聞などでリコール情報をチェックする習慣を身に付けることも大切だ」とアドバイスしている。
■誤用や耐用年数経過で事故も
製品評価技術基盤機構はホームページ(HP)で最近のリコール・事故情報を紹介、平成元年度以降のリコール情報を検索できるようになっている。消費者庁もHPに19年度以降のリコール情報を掲載。各地の消費生活センターでもリコール情報を得ることができる。
一方で、リコールされていない製品でも誤った使い方や耐用年数を超えて使用すれば思わぬ事故につながる。製造から30年以上たった扇風機が原因で火事になり、死者が出たこともあった。
久新さんは「どんなものでも壊れる可能性があることを認識してほしい。経年変化によるトラブルは変な音がしたり、焦げ臭いにおいがしたりするなど事前に異常が察知できることも多い。普段から手入れをして異常がないかのチェックが必要だ」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/medical/snk20130311500.html