これが仏壇?キラキラ位牌、ヴェネツィアンガラス骨壷…変わる供養の形の「理由」
真珠貝が一面に張り巡らされたキラキラ光るキャビネット、真っ黒なスピーカー風、豪華なイタリアン家具風-いずれも「仏壇」だ。ここ数年、一見したところ、高級家具のような仏壇が次々と登場し人気を集めている。仏壇に飾る仏具も、ヴェネツィアンガラスや大理石など、おしゃれに進化。供養の姿も様変わりしつつある。(木村郁子)
■スピーカー?
大阪市東成区の堤加代子さん(62)は4年前、自宅の改築をきっかけに、壁掛けタイプの仏壇を購入した。約50センチ四方の正方形で奥行きは15センチ、黒一色。真ん中に丸い切り込みがあるので、オーディオのスピーカーのようにも見える。扉板を左右にスライドして開けると、位牌や仏具が並ぶ「仏壇」が現れる。「友人が遊びにくると、『えっ、これ仏壇?』と感心されます」と堤さん。
堤さん宅では、以前は、同居する母親が先祖から受け継いだ大きな仏壇があり、さらに亡くなった母親の妹の仏壇もあった。「夫も長男なので、夫の先祖の仏壇も引き受けることになる。1つの家に3つも仏壇となるなら、いっそのこと宗派に関係なく1つの仏壇でおまつりしようと思いました」。隔離された仏間に置くのではなく、みんなが集まるリビングに置けるような仏壇にしたいと考え、壁掛けタイプを選んだ。「リビングに置いているので、亡くなった父や叔母を常に身近に感じられます」と満足している。
“家具調仏壇”を企画・販売している八木研(大阪市東成区)は、昭和59年に業界で初めて「自由仏壇」を発表。その後、鏡台風、飾り棚風、アンティーク調などデザイン性に富んだ現代的な仏壇を提案している。仏壇に合わせて、仏具もクリスタルの位牌や、カラフルなヴェネチアンガラスの骨壺など、従来にないタイプを次々に発売した。
ただ、「当初は『こんなのは仏壇じゃない』と言われました」と同社広報企画室担当の北野翔子さん。ところが、平成12年に東京都内に直営店を開いたことがきっかけで認知度が高まり、ここ数年は、家の新築や引っ越しをきっかけに購入する人が多くなったという。
「これまでは仏壇仏具は宗派や予算によってある程度決まった部分がありましたが、最近は。どうまつりたいかという個人の考えが強く出ているように思います。だから、家具のような仏壇や仏具が受け入れられているのでは」と北野さんは分析する。
■家具調、アート作品風も
大阪市北区の阪神百貨店の仏壇仏具売り場では、従来の唐木の仏壇、棚などの上に置く小型の仏壇などと並んで、キャビネット型の家具調仏壇も展示している。家具調仏壇の人気は高く、「ここ3、4年特に伸びています」と同店インテリア用品販売部マネージャー、伊豆実さん。「高齢の親御さんを子供世帯が引き取るときに、大きな仏壇は無理、となる。買い替えることになったときに選ぶのは家具調という傾向があります」と話す。特に若い世代にとっては、取り扱いがしやすく、価格も手頃とあって、家具調が人気だという。
一方、アート作品のような仏壇も。「三河仏壇」の職人グループ「アートマン・ジャパン」(愛知県幸田町)を主宰する都築数明さん(41)は、鎧甲のような仏壇や、高さ45センチほどの牛のフィギュアとロボットを組み合わせたような「ポップカルチャー仏壇」などを制作している。オブジェのように見えるが、真ん中に丸い穴が空いており、小さな仏像などが収められるようになっている。 都築さんは東日本大震災の後、一昨年6月から月に一度、職人グループの仲間とともに被災地に入り、津波に流され、壊れたり、傷ついた位牌を修復するボランティアに携わった。その数、昨年末までに約120柱。壊れた仏壇や位牌を「なんとか修復したい」と強く思う被災地の人たちに接してきた今、「個々の生き様を表すような仏壇や位牌が作れないか」と考えているという。
葬祭業大手「メモリアルアートの大野屋」(東京都豊島区)の仏事アドバイザー、川瀬由紀さん(34)は、「近頃の仏壇は、伝統的な宗派にのっとったものを選ぶのか、故人らしさを前面に出した仏壇を選ぶのか、二極化しています」とみる。「ただ、住まいのインテリアと並べても主張しすぎず、なじみよい家具調のものを選ぶ人は確実に増えています。葬儀も家族葬や手元供養など多様になっており、亡くなった人をしのぶスタイルは多種多様になっていくのでは」と話している。
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/snk20130310546.html